2015年に定められて以来、日本国内でもSDGsの認知が広がってきました。企業によっては「そろそろ取り組みをはじめよう」と動き始めたところも多いのではないでしょうか。
企業でSDGsに取り組むといっても、何から始めればいいのかわからないし、そもそも取り組むメリットがわからないからイマイチ気が乗らない…なんてこともあるかもしれません。
この記事では、企業がSDGsに取り組むメリットだけでなく、取り組まないことで起こるデメリットや具体的に企業が取り組んでいる事例についてご紹介します。これから企業でSDGsへの取り組みをスタートさせたい方や、まだあまり意味がわかっていない、またははじめてみたけれどうまくいっていない、という方も参考にしてみてくださいね。
目次
そもそもSDGsとは何か?
SDGsとは結局のところ何なのか、最初に基本的な情報を把握しておきましょう。
国連が定めた「持続可能な開発目標」
SDGsは2015年に国連が定めた、持続可能な社会の実現のための17の目標です。貧困や経済格差といった世界で起きている諸問題の解決に努めるもので、ジェンダー平等や気候変動といった課題も含まれています。先進国である日本も決して例外ではありません。
12兆米ドルの経済効果を生む?!
なぜ国連がSDGsを定め、世界的に様々な企業がSDGsへの取り組みをスタートさせているのでしょうか。
企業がSDGsに取り組むメリットについて詳しくは後述しますが、SDGsに取り組むことは新しい技術やビジネスモデルを生み出し、未開拓の巨大な市場に進出することができるチャンスでもあるからです。新たなビジネス、市場が広がれば資金が動き、そこには新しい雇用も生まれ、SDGsの目標のいくつかを解決に導くことにもつながるでしょう。
そうした新ビジネスや市場の誕生を見込みにいれた国連の試算によると、SDGsが達成されれば2030年までに世界経済に12兆米ドルの価値をもたらし、38億もの雇用を生み出すとされています。12兆米ドルというと1ドル105円として換算すると約1,260兆円です。
地球上のすべての人が幸せに
SDGsを達成することは、「誰一人取り残さない」社会の実現につながります。国連が定めた、というと一企業、一個人には関係ないと思われるかもしれません。
しかし17の目標を見れば、すべて達成されたときには世界中の人々が誰もが幸せになっている社会が思い描けるのではないでしょうか。SDGsを達成すれば、地球上のすべての人が幸せになるのであれば、それはとても価値のあることでしょう。
SDGsに取り組むメリット
企業がSDGsに取り組むメリットは何なのか、より細かく見ていきましょう。
企業のブランディング
SDGsは他でもない国連が定め、世界中で取り組みがスタートしています。ただでさえ近年の日本企業は、高度経済成長期に比べて世界的な地位が低く見られてしまいがちです。世界中のいくつかの国に比べて恵まれている先進国のひとつである日本、その日本にある企業として、世界的な取り組みに賛同していくことは、企業のブランディングを良い方向に導いていくことでしょう。
反対に、海外ではSDGsに反するとして企業のブランドイメージが下がってしまった有名企業も少なくありません。児童労働をさせていたナイキや、低賃金労働が問題となっていたZARAやH&Mといったファストファッション企業は、大きな批判を受けています。
社内の一体感が高まる
SDGsに関する知識やその価値について、日本ではまだ認知が浅い企業もあります。しかし企業で取り組むとなれば、社員全員が同じ目標に向かって進んでいくことになるので、社内の一体感が高まるでしょう。
普段社員にまとまりがない、日々の業務にマンネリしてしまっていると感じている企業は、社員の団結力を高める意味でも取り入れてみるといいかもしれません。
優秀な人材の獲得
そもそも1990~2000年代に生まれたミレニアル世代と呼ばれる若い人たちは、高度経済成長期やバブルの時代を知らず、生まれた時から日本の経済が低迷した時代を生きてきた人たちです。もっと豊かになりたいというハングリー精神を持つ人も多く、起業願望のある人も少なくありません。
またこの世代はスマホネイティブ世代ともいわれ、生まれた時からスマートフォンを通じて様々な情報に触れてきた世代です。この世代の特徴として、環境問題に強い関心を持っていることが多く、それ以前の世代とは異なる視点や価値観を持っているため、これからの企業の活動に大きな影響を与えていくと期待されています。
すでにSDGsに取り組んでいる企業や、意欲的な企業は、ミレニアル世代の優秀な人材が集まる可能性は高いでしょう。一方でSDGsには関心のない企業、知識も浅い企業だと思われたら、見限られてしまう可能性もなくはありません。
SDGsに取り組むデメリット
メリットがあればデメリットもあります。企業にとってSDGsに取り組むことは、どんなデメリットがあるのでしょうか。
負荷がかかる
SDGsという新しい取り組みをスタートさせることで、新しい商品の開発や環境分野への進出にコストがかかることもあるでしょう。
SDGsに取り組むにあたり自身でも知識を増やしていく必要はありますし、社員に浸透させるための施策を講じる必要も出てくるかもしれません。物理的にも精神的にもある程度の負荷がかかることは覚悟しておきましょう。
本業に支障が出る可能性がある
環境問題への配慮、社会貢献などに意識を向けるあまり、本業の利益になかなかつなげることができず挫折してしまう可能性もあります。
やみくもにコストをかけて挫折してしまっては元も子もありません。本業との兼ね合いもきちんと考慮して取り組んでいく必要があります。
SDGsに取り組む企業の実例とメリット
実際にSDGsに取り組んでいる企業の実例を4つご紹介しましょう。それぞれどのような取り組みを行っていてどのようなメリットがあるのかをまとめました。
【海外】シムライズ(Symrise)
ドイツの香料メーカー、シムライズは、マダガスカルで複数の衛生用品メーカーや食品メーカーとともに「バニラ・アライアンス」というコミュニティを発足しました。マダガスカルの森林保護や教育、保健などにも目を向けて、継続的なバニラ調達を実現する取り組みです。
この取り組みをはじめとした持続可能な社会実現に向けた貢献が評価され、ドイツ・サスティナビリティ・アワードを2回受賞しています。CEOはハーバード・ビジネス・レビューにおいて「最も功績をあげたCEO」ランキングの35位にランクインしたばかりか、2020年上半期の売り上げは7.6%上昇しました。
【海外】ユニリーバ(Unilever N.V. / Unilever plc)
洗剤やヘアケアといった衛生用品を取り扱うユニリーバは、前CEOが2012年にSDGsの草案作りに携わったという、早くからSDGsへの意識が高い企業です。
SDGsの目標6「安全な水とトイレ」の達成に向けて、バングラデシュを支援するために家庭用浄水器のブランドを重点的に拡大し、バングラデシュの人たちに安全な飲み水を提供しています。
ユニリーバは前述のバニラ・アライアンスのコミュニティにも属しており、SDGs関連の筆頭企業のひとつといえるでしょう。
【日本】株式会社明治
明治は、持続可能なカカオ豆の調達のため、「メイジ・カカオ・サポート」を実施しています。
以前からチョコレートの売り上げの一部を低賃金で労働しているカカオ産出国に寄付してもいましたが、ガーナやペルー共和国といったカカオ農家のある産出国に赴いて、井戸や学校用品の寄付といった環境整備、農家の育成に力を入れています。
カカオ産出国の人たちの生活が豊かになる一方、カカオ豆が継続的につくられる環境が整うことで明治はチョコレートを継続的に売り続けることができるのです。
【日本】サラヤ株式会社
サラヤはもともと、パーム油をつかったヤシノミ洗剤というロングセラー商品をメインとする衛生用品メーカーでした。
しかしパーム油が東南アジアの生態系破壊につながっていることが知られ、「環境に配慮していない企業」と認識されてしまったのです。
そこでサラヤは、パーム油製造に伴う無秩序な森林伐採を徹底的に食い止める活動を開始しました。結果、環境保全や持続可能な社会づくりに貢献する企業というブランドを取り戻し、業績も右肩上がりになったといいます。
まとめ
SDGsに取り組む意味と、実際に取り組んでいる事例とそのメリットをご紹介しました。
SDGsを達成することは地球上のすべての人の生活が豊かになることであり、それにはもちろん個人個人の力も重要ですが、企業が取り組むことでSDGsの達成はより加速することでしょう。何より、世界が良くなるために取り組んでいるわけですから、ブランドイメージもプラスになります。
企業のイメージアップのためにも、SDGsに積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。