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SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」実現するためには?

ゲームの駒で並べて形作ったハートマーク

SDGsでは17の目標が掲げられています。その中の10番目は「人や国の不平等をなくそう」です。

SDGsで掲げられる目標はすべて、いま世界にある解決すべきとされている課題から生まれています。10番目の目標が掲げられた背景には何があり、その目標を達成するために何ができるのでしょうか。

この記事では、実際にいま世界で起きている諸問題や、日本はどのようにかかわっているのか、また企業の実例も含めて解説します。個人や企業に何ができるか考えてみましょう。

SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」

SDGsと書かれたブロックと黄色いボール

国連の定義では目標10は性や年齢、人種、階級、宗教、その他すべての不平等をなくすことですが、中でも特に所得の不平等の軽減を求めています。SDGsは169のターゲットも定められていますが、10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」には、7つの達成目標と3つの実現方法から成る10のターゲットがあります。

SDGsの基本知識をおさらい

SDGsとは、2015年に国連で採択された「世界共通の目標」です。世界に起きている課題を17の目標と169のターゲットに可視化し、2016年から2030年までの15年間で達成することを掲げました。「誰一人取り残さない」というスローガンを掲げ、発展途上国・先進国かかわらず地球上のすべての人が幸せな生活を送れる未来を目指す施策です。

目標10のターゲット:7つの達成目標

7つの達成目標は、目標10を達成するために必要な、より具体的な達成目標が定められています。

10-1:2030 年までに、各国の所得下位 40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
10-2:2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
10-3:差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
10-4:税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
10-5:世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
10-6:地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
10-7:計画に基づき良く管理された移住政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
引用:外務省公式ページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf)

企業としては所得の不平等を軽減するために、人事評価制度の改革や人材育成に力を注ぐことが目標10の達成につながるといえるでしょう。また個人でも、社会的経済的な地位に関係なくすべての人に平等に接するなど、1人ひとりが意識できることがあります。

目標10のターゲット:3つの実現方法

実現するための具体的な方法については、 3つのターゲットが掲げられています。簡単にご紹介しましょう。

10-a:世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
10-b:各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
10-c:2030 年までに、移住労働者による送金コストを 3%未満に引き下げ、コストが 5%を越える送金経路を撤廃する。
引用:外務省公式ページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf)

10-aと10-bは開発途上国に資金が流れるように、輸出入のバランスをとったり関税を調整したりすることについて言及しています。10-cは移住労働者の送金コストについて触れているのですが、日本で普通に生活している私たちには実感がわかない内容かもしれません。

SDGsの目標10はなぜ必要なのか?

悩む女性

SDGs10番目の目標はなぜ必要とされているのでしょうか。

「誰一人取り残さない」社会の実現

2015年に掲げられた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にはSDGsのスローガンとして「誰一人取り残さない」があります。

10番目の目標を達成して不平等をなくすということは、「誰一人取り残さない」社会を実現するために必要不可欠なのです。

世界中に蔓延している「貧富の差」

日本では貧富の格差については、あまり実感がわかないかもしれません。しかし、世界では貧富の格差が蔓延しており、もはや見逃せないほどです。

2017年の国際協力団体オックスファムの報告で、世界で最も豊かな8人が貧しい36億人に匹敵する資産を保持していると発表されました。世界の99%の経済が1%の富裕層のために成り立っているといわれているのです。

世界の経済格差を知るうえで、当時国際的に注目を浴びた、「ラナ・プラザ」の悲劇があります。

繊維産業が盛んな国バングラディシュの商業ビルが突如崩落し、死者1,100人以上、負傷者2,500人以上と多数の犠牲を生みました。
犠牲者の多くはスラム出身者や貧困層で、劣悪な環境かつ低賃金で強制的に就労させられていました。

手ごろな価格で手に入るファストファッションは、貧しい国の若者を搾取している可能性がありことを忘れてはなりません。

「誰一人取り残さない」社会の実現には、残り99%のための経済活動を生み出していく必要があるでしょう。

SDGsの目標10に該当する諸問題【海外】

海沿いの町

目標10の「人や国の不平等をなくそう」に該当する世界の諸問題は数多くありますが、中でも代表的なものを4つピックアップしました。

移民を守る法律の有無

国連が2020年に発表しているデータでは、移民を守る法律をつくっている国は世界の約6割にも満たないとされています。

日本ではなじみが薄いですが、世界では貧困国や紛争地域から逃れて他の国に移り住む移民が多いのが現状です。しかし移民を守る法律がない国に移り住むと、低賃金労働を課せられ、保障も受けられず、社会的に差別されてしまうこともあります。

2020年は新型コロナウイルスが猛威をふるいはじめ、子どもや女性、高齢者といった社会的に弱い立場にある人たちが大きな打撃を受けました。移民もまた、そうした弱い立場に追い込まれています。

教育を受けられない子どもたち

日本の識字率は100%といわれており、世界的に見て高水準の教育環境を保っています。しかし世界に目を向けてみると、開発途上国の子どもたちの多くが学ぶチャンスに恵まれていません。

ユニセフの2018年のデータでは、エチオピアの農村地域では障がいのない子どもの47%が十分な教育を受けられていません。さらに、障がいのある子どもに限ってみると、98%が教育を受けられていないのです。

なくならない人種差別

世界ではいまだに人種に対する差別が根強く残っており、社会的な問題となっています。肌の色だけでなく国籍による差別もあり、オーストラリアではアジア系オーストラリア人の約8割が人種差別を経験しているというアンケート結果も出ています。

近年では日常生活のみならず、ネット上で謂れもない差別を受けることも少なくないようです。

性別による格差

性別の違いによる賃金や就業率の格差は、徐々に是正されてきています。

しかしいまだに放置されている問題として、家事や育児、介護といった無償労働である「アンペイドワーク」を女性に強いている傾向があります。

社会保障の有無

失業手当や障害者年金、年金といった日本ではほとんどあたりまえに受けられる社会保障ですが、世界を見るとまだまだ不十分な国が多くあります。

特に保障が受けられる子どもの割合はより少なく、世界の3割程度であることがわかりました。家庭の経済状況が悪化したとき、国の制度に守ってもらえる子どもの数は、世界的に見ると10人に3人しかいないという計算になります。

また国によっては社会保障制度があっても、国の財政がよくないために子どもへの給付金を減らしているところもあります。社会保障の有無は、これからの未来を担っていくはずの子どもたちの命を左右する重要な課題のひとつといえるでしょう。

SDGsの目標10に該当する諸問題【国内】

パソコンで作業をする女性

世界で起きている課題に関しては、日本に住んでいると身近に感じられないことが多いかもしれません。しかし「人や国の不平等をなくそう」という目標の達成には、日本でも解決しなければならない不平等問題があります。

ジェンダー差別

日本では古くから男尊女卑の価値観がありました。近年はかなり是正されたものの、社会人になるといまだに女性が差別されている環境も見られます。

接待やお茶汲みは女性がやるものだという会社や、産休をとると仕事に復帰しにくくなったり、かといって男性が育児休暇をとるのははばかられたりすることも多いでしょう。

世界全体で女性議員の割合は全体のたった2割というデータがあります。日本でも女性が社長や管理職に就く例は増えてきてはいますが、重要な意思決定の場に女性を起用することは日本でも世界全体でもまだまだ多いとはいえません。

ジェンダー平等の実現は、SDGsの目標5番目に掲げられている世界の課題のひとつでもあります。

少数派に対する差別

少数派だからという理由で差別されている人が日本にもいます。マイノリティと呼ばれている彼らは、生まれ育った環境のために結婚差別を受けたり、在日コリアン、アイヌ民族であるために働き口がなく貧困の危機にさらされていたり、 LGBTや障がいのために精神的につらい目にあわされたりしているのです。

日本は単一民族国家のため、一見すると人種差別がないように見えますが、それに属さない人たちに寛容であるとはいい難い面があります。つまり、柔軟性が欠けるところがあるのです。少数派を攻撃しやすい傾向にあり、多様性を認めることが推奨されながらも、人々の意識改革が追い付いていないのが現状といえるでしょう。目標10を達成していくためには、少数派に対する差別の問題は、日本も避けては通れない課題のひとつです。

SDGsの目標10への日本企業の取り組み事例

ネクタイを締める男性

目標10「人や国の不平等をなくそう」の目標達成のために、企業ができることは何でしょうか。実際に取り組んでいる企業の実例から学んでみましょう。

株式会社ウエーブ

株式会社ウエーブはネット印刷・紙工をはじめとしたデザイン制作、ロボティクス開発など幅広く事業を展開しています。

SDGsの17の目標に対して多角的に取り組んでおり、目標10に関連する取り組みとしてはコンプライアンスの徹底や働き方改革の推進、次世代の育成やダイバーシティに力を入れています。

ダイバーシティはすべての社員が平等に昇進のチャンスを得られるように人事制度を整えることをいいます。所得の不平等を軽減するという国連の意図に沿った取り組みといえるでしょう。

アサヒグループホールディングス株式会社

酒類事業を中心に飲料や食品事業を展開するアサヒグループホールディングス株式会社では、サスティナビリティを掲げて様々な取り組みを行っています。

SDGsの目標に向けて気候変動や循環型社会への取り組みを実施していますが、その中でも基本的人権とダイバーシティに力を入れています。

多様な働き方を支援する制度として、フレックスタイムやテレワーク、産休・育休制度の充実、退職後もまた働くことができる「ウェルカムバック制度」、スキルアップのための「スキルアップ休職制度」など様々な制度を導入しています。

さらに「アサヒグループ人権方針」を掲げ、基本的人権の尊重、人種・国籍・思想信条・宗教・身体障がい・年齢・性別、配偶者の有無及び性自認・性的思考による差別は一切行わないことを明示しています。

アートコーポレーション株式会社

引っ越しで有名なアートコーポレーション株式会社では、SDGs10の目標に達成に向けて「働きがいのある環境づくり」に取り組んでいます。

その中でも性差別をなくすために行われているのが、女性従業員による「女性活躍推進プロジェクト”Weチャレンジ”」です。このプロジェクトは女性が主体となり、性別に関係なく働きやすい環境を考え、実行されています。

また子育てにも力を入れており、子育てサポート、次世代育成支援対策推進法に基づいた認定企業です。

花王株式会社

日用品を販売する花王株式会社では、より多くの人が理解し、使いやすい製品づくりを推進しています。

「人にやさしい」「うれしいをかたちにする」「人や社会とつながる」の3つの指針を掲げ、文化や言語、国籍や障害の有無、性別や年齢を問わないユニバーサルデザインを実現しています。

ボトルの側面を触るだけでシャンプーだと判別できるように容器に凹凸をつけたり、子供やシニアが使いやすい泡タイプのハンドソープの展開、手や腰に負担がかからないお掃除ワイパーの発売などモノづくりを通したSDGsの推進が行われています。

アクセンチュア株式会社

総合コンサルティング会社として知られるアクセンチュア株式会社は、本社をアイルランドに置く多国籍企業です。

SDGsの17の目標達成につながる様々な取り組みを行っていますが、目標10に関連する取り組みとして行っている「インクルージョン&ダイバーシティ」が優れています。すべての社員にとって平等な職場環境を整えることにコミットしており、2025年までに男女比が50:50になるようにする、という数値目標を設定し、2020年10月時点ですでに女性の割合が45%となりました。

アクセンチュアのCEO、インクルージョン&ダイバーシティの統括役員に日本人女性を登用していることからも、会社全体で取り組んでいこうという強い意志が伝わります。

他にもあらゆる差別をなくそうというポリシーや人材育成のために投資する姿勢が評価され、リフィニティブの2020年「ダイバーシティ&インクルージョン・インデックス」において世界第3位に選ばれました。「ダイバーシティ&インクルージョン・インデックス」は、多様性と受容性に富んだ職場環境を整えている上場企業100社を認定するもので、アクセンチュアは2016年から5年連続でトップ100に選ばれています。

SDGsの目標10への海外企業の取り組み事例

テーブルの上でこぶしをぶつけ合う

 

Apple社

Apple社では、絵文字を通してSDGsの目標を実践しています。

2015年4月から、アップルのIOSに新たな絵文字が約300種類の絵文字が追加されました。その絵文字は、黒人や黄色人種のキャラクター、ジェンダーレスに配慮した同性カップルの家族の絵文字など多様性にあふれるものでした。

さらに2019年の国際絵文字デーには、同性同士や異人種のカップル、車いすや白杖を使う人、盲導犬や義足などの絵文字が追加されました。

マスターカード

世界中の政府機関やNGOとグローバルパートナーシップを連携し、身分証明書を持たない女性のためにナショナルIDを発行しています。

マスターカードでは、貧困と不平等の問題が指摘されているナイジェリアの女性に対して支援を行っています。マスターカード付きのIDカードは、政府からの支給金をカードに直接電子化して保持することが可能であり、女性が安全にお金を管理することに役立っています。

マクドナルドホールディングス

教育の不平等の解消に力を入れているマクドナルドホールディングスでは、従業員のための教育機会を設けています。

高校中退した従業員は、高校卒業の資格を得られるプログラムを無料で受講でき、大学の授業料を援助する支援も行っています。

また母国語が英語ではない従業員は、無料で英語のクラスを受講できます。

まとめ

握手をする男性

SDGsの10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」についてまとめました。

SDGsの他の目標とも切り離せない関係にあるこの目標は、これまで日本でも教育の中で誰もが触れてきた課題であるにも関わらず、具体的にどう変えていくべきか、向き合ってこなかった課題でもあります。

世界全体で同じ課題の解決に向かおうとしている今、自分にできることからはじめてみてはいかがでしょうか。