マーケティングを担当している方は、「ポジショニング」という言葉を耳にすることが多いのではないでしょうか。
ポジショニングは戦略よりも重要な土台となるもので、ポジショニングに成功すると専門性が高まり、価格競争に巻き込まれずに自社の製品を販売しやすくなります。
この記事ではポジショニングとは何か、ポジショニングの作成方法から実際の事例について紹介します。ポジショニングを取り入れる際のコツについても解説するので、ぜひご自身のビジネスにもお役立てください。
目次
ポジショニングとは
ポジショニングとはマーケティング戦略の一つであり、顧客に自社商品と他社商品の差別化イメージを認知してもらうための活動です。
ポジショニングでは競合他社を分析し、ライバル不在の場所で自社の差別化ポイントを明確にし、他社の追随を許さない確固たる地位を作っていきます。
つまり、顧客に自社製品と他社製品の違いを認識してもらうことができれば、ポジショニングが成功します。
専門性のイメージが認知された例として、掃除機のダイソンがありますが、吸引力が落ちない点で他者との差別化で成功しました。
ビジネスを行ううえで、ポジショニングは土台であり重要です。まずは自社の商品・サービスのポジショニングを明確にしたうえで、戦略を立てていく必要があります。
なぜポジショニングが重要なのか
ポジショニングが重要とされている理由として、顧客が自社製品を選ぶ理由がなくなってしまうということがあります。
他社の商品やサービスと自社商品との違いが明らかではない場合、顧客は自社の商品を選ぶ理由がなくなります。そのため顧客は、より価格が安い商品、またはより知名度やブランド力がある商品を選択するようになります。
そうなると、知名度や価格で勝負できない商品・サービスは、顧客の獲得が難しくなります。ポジショニングに失敗した例として、日本の家電業界があります。ポジショニングで商品の差別化ができていなかったために、同様の性能で低価格な商品を販売する中国企業の製品に顧客を奪われてしまいました。
ポジショニングと似たような用語として、USPがあります。USPについてはこちらの記事で解説しています。
ポジショニングの作り方4ステップ
ポジショニングの意味や重要性について理解したら、次はポジショニングの作り方をみていきましょう。
ここでは、ポジショニングをゼロから作成する方法を4ステップに分けて解説します。
ステップ1 ターゲットを明確にする
まずは誰に向けて商品・サービスを提供するのか、理想の顧客を明確にします。そしてその人に向けて、どんな商品・サービスを提供するのかを決めていきます。
ステップ2 差別化できる点を探す
次は、自社製品・サービスは他社と比べてどんな点が優れているのか、差別化できる点を探します。
このときに使用するのが3C分析で、現状を把握して整理することができるため経営戦略を立案する際に役立ちます。
ちなみに3C分析とは、「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3要素から分析する方法で、それぞれの頭文字をとって「3C分析」といわれています。
顧客が商品から得られる利点として、いくつか候補が出てくると思います。しかしその中から、自社製品が他社と比べて優れている点を一つだけ決める必要があります。良い点がいくつもありすぎると、顧客に良い点が伝わりにくくなってしまうからです。
顧客に刺さる利点を一点に絞り、より伝わりやすいようにエッジの効いたネーミングを定めます。
ステップ3 ポジショニングマップを作成する
市場のどの場所でビジネスをするかを決めるために、ポジショニングマップを作成します。ポジショニングマップ作成手順は以下の2点です。
①2つの軸を決める
ポジショニングマップを作成するために、縦軸と横軸の2つの軸を決める必要があります。軸としては、ターゲットとなる顧客が意識しそうな2つの軸を考えます。
例えば若い世代をターゲットとしている場合は、「低価格」「おしゃれ」などが考えられます。
②軸に競合他社を配置していく
縦軸と横軸を決めたら、続いては競合他社がマップのどの位置にいるかを考えます。
ここでのポイントは、なるべく偏りがでないように他社を配置することです。そうすることにより、自社にとってライバル不在の穴場となる場所を見つけやすくなります。
ステップ4 ニッチ戦略で自社のポジションを決める
自社製品・サービスの方向性を決めるために、ニッチ戦略でいろいろな切り口を考えます。他社と比較して、唯一自社が取れるポジショニングはどこか、差別化できるポイントは何かをマップと照らし合わせて探していきます。
ちなみにニッチ戦略とは、特定の市場を狙ってビジネスを展開することです。
例えばコーチングを提供するのであれば、他と組み合わせてコーチングとコンサルをやってみる。日本全体ではなく、東京都の日本橋で営業するなどがあげられます。
そして全ての大きな市場を取れなくても、市場を絞り込んで自社がNO1になれる場所を見つけていきます。
コーチングコンサル業だけではなく、24時間対応するなどNO1になれる要素を追加することでニッチな市場を絞り込んでいきます。
ポジショニングに必要な視点
ポジショニングを行っていくうえで意識しなければならないことは、顧客視点で考えることです。ついつい企業側の視点から、他者と比べて自社商品の優れている点を考えがちですが、ターゲットである顧客が魅力を感じているかという視点が大切になります。
ポジショニング3つの秘訣
ポジショニングを成功させるためには、以下3つのコツをおさえておく必要があります。
1.十分な市場規模はあるか
顧客の需要があるポジションを選ばなければ、利益が得られない可能性があります。
2.自社のポジショニングは、顧客のニーズはあるか
顧客のニーズを理解せずに2つの軸を設定してしまうと、商品が売れなくなるリスクがあります。
3.自社の企業理念や戦略と商品のポジショニングの整合性はあるか
理念と商品との間に一貫性がない場合、顧客からの印象が低下する可能性があります。
以上の3つの秘訣を念頭において、ポジショニング戦略を行うことが重要になります。
ポジショニングの成功事例
事例1:ポカリスエット
今となっては当たり前となったスポーツ飲料ですが、ポカリスエットは当時の日本では未開拓の「スポーツ飲料」の市場を作り上げることに成功した事例の一つです。
しかしポカリスエットの後発として競合他社が次々と現れたことで、ポジショニングの取り直しが必要となりました。そこで「スポーツ飲料」から「健康的な清涼飲料水」というポジショニングを行い、他社との差別化がなされ、再び成功をおさめました。
事例2:「吉野家」と「すき家」
牛丼で有名な「吉野家」と「すき家」の両社は、それぞれポジショニングに成功している企業です。
牛丼のチェーン店としてパイオニアとなった吉野家では、ターゲットとなる顧客を「ビジネスマン」「働く男性」に設定してポジショニング戦略を行いました。
男性ビジネスマンにニーズがある価値として、「低価格」「スピーディーな提供」「ボリュームもあってお腹いっぱいになれる」の3つを提供しました。
以上の戦略により牛丼チェーンとして絶大な支持を得た吉野家に対し、後から参入したすき家ですが、ポジショニングにより成功をおさめました。
すき家は吉野家とは異なる市場を狙い、ターゲットを「女性」「ファミリー層」に定めました。牛丼だけではなくカレーなど多様なメニューを展開し、幅広い層に指示される外食チェーン店として人気となっています。
まとめ
ポジショニングは、マーケティングを行ううえで必要不可欠の重要な手法です。
ポジショニングにより、競合他社と自社の立ち位置が明確になり、ビジネス戦略が立てやすくなります。
本記事を参考に、ぜひあなたの会社でもマーケティング戦略に取り入れてみてください。
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