SDGsには、「パートナーシップで目標を達成しよう」や「平和と公正をすべての人に」といった目標がありますが、その中の1つとして「海の豊かさを守ろう」があります。しかし、これだけでは具体的にどのような意味なのか把握するのは難しいでしょう。
そこで今回は、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」の基本情報や取り組みなどについて紹介します。海の問題について関心がある方や、どのように守っていけば良いのかを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそもSDGsって?
そもそもSDGsとは、国際的に掲げられている「持続可能な開発目標」のことです。「SDGs」という名前は、Sustainable Development Goalsの英語の頭文字と最後のスペルを組み合わせて作られました。
読者の中には「SDGsって何?」と思っている方がいるかもしれないため、目標14について説明する前に、SDGsの基本情報を紹介します。すでに知っている方も、この項目で見直してみましょう。
SDGsには17の目標がある
SDGsで掲げられている目標は、全部で17個あります。冒頭で述べたもの以外には、「質の高い教育をみんなに」や「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「産業と技術革新の基盤をつくろう」などです。もし他の目標も気になるのであれば、外務省や国際連合広報センターの公式サイトをチェックしてみてください。どれも視覚的にわかるようにイラストが付いているため、どのような内容なのか把握できるでしょう。
SDGsのターゲット
SDGsを知る上では、目標だけではなくターゲットもチェックすべきポイントです。ターゲットは目標ごとに設けられており、全部で169ターゲットもあります。ターゲット自体はどれも具体的に定められているため、それぞれの目標をどのように達成していけば良いのかという方針が把握できます。もちろん、今回のテーマである目標14にもさまざまなターゲットが設けられています。
SDGsの背景
SDGsが誕生した背景には、MDGsという過去の国際的な取り組みが挙げられます。MDGsとはミレニアム開発目標のことであり、2000年に開催された国連ミレニアム・サミットで採択されました。MDGsでも複数の目標が掲げられており、実際に一定の成果が見られた目標もあったと報告されています。
ただ、最終的にはすべての目標を達成することはできませんでした。その上で誕生したのがSDGsであり、目標もターゲットもMDGsよりも増えており、新しい開発目標として世界各国で取り組まれています。
目標14「海の豊かさを守ろう」とは何か?
SDGsに関する基本情報を踏まえた上で、次に今回のテーマである目標14の基本情報を見ていきましょう。目標名としては、「海の豊かさを守ろう」というものですが、具体的にはどのような内容なのでしょうか。
目標14の基本情報
目標14「海の豊かさを守ろう」とは、海洋および海洋資源をただ使い続けるのではなく、持続可能な開発を目指して厚く保護し、その形のままで利用することを指します。
わたしたちは豊かな海から、魚などの食べ物を捕ったり、観光資源として活用するなど様々な恩恵を受けています。
細かいことは後ほど別の項目で紹介しますが、現代の海は魚類資源の減少や水質の悪化、海面の上昇などさまざまな問題を抱えています。「いや、別に海なんて自分の生活に関係ないので…」と考える方もいるかもしれませんが、そのまま何もせずこのまま使い続ければ、普段わたしたちが当たり前に食べているマグロなどの魚が食べられなくなる可能性もあります。
また海に関する仕事をしている人だけではなく、世界中の人々に大きな悪影響を及ぼしてしまいます。そのようなことを踏まえて、「海の豊かさを守ろう」という目標が掲げられました。
目標14のターゲット
目標14「海の豊かさを守ろう」のターゲットは、全部で10個あります。内容としては、海洋汚染の防止および削減や海洋酸性化の影響に対する対応、海洋および沿岸の生態系回復などです。ターゲットはそれぞれ長文のため、ここで全文を紹介することはできませんが、どれも海のことやそこに生活する生物のことなどが考えられている内容となっています。
目標14「海の豊かさを守ろう」はどうして必要なのか?
なぜ海の豊かさを守る必要があるかというと、地球環境を持続的に守り、地域の経済発展につながっているからです。
しかし、現代の海洋環境は深刻な問題を抱えています。代表的なものとして「プラスチックやゴミによる海洋汚染」「水質悪化」「海洋資源の乱獲」がありますが、それぞれどのようなものなのでしょうか。そこでこの項目では、問題ごとに詳しく紹介します。
問題①プラスチックやゴミによる海洋汚染
近年世界中で大きな関心を集めている問題が、プラスチックによる海洋汚染です。環境省の調査では1950年代と比較し、世界のプラスチック生産量は20倍以上に急激に増えています。プラスチックはゴミとして捨てられても、分解されないためずっと残り続けるのです。捨てられたプラスチックゴミは、最終的に雨風により川から海に流されます。その結果として、海はプラスチックのゴミ箱と化しているのです。2016年に開催された世界フォーラムでは、2050年にはプラスチックの量が海に生息する魚の量を上回るといった予測が出されました。プラスチックゴミに関しては、後ほど詳しく解説します。
また海洋汚染のゴミの種類として、海岸やその周辺に不法に捨てられたゴミもあります。不法投棄は違法であるにもかかわらず、一向に減りません。また、釣り糸や浮きといった釣り関連の道具も海に捨てられており、一部の悪質な釣り人による海洋環境の悪化が問題となっています。
問題②水質悪化
水質悪化の原因の一つに、油があります。船舶事故やバルブの人為的ミスなどよって漏れ出た油は海にとって非常に有害であり、海洋汚染につながります。「ただ見た目が悪くなるだけでは?」と思うかもしれませんが、油による海洋汚染の被害は甚大です。油は海に生息するさまざまな生物を死滅させてしまう上に、環境そのものも脅かします。
また地球温暖化の原因となっている二酸化炭素の増加は、海洋環境へ「海の酸性化」という悪影響をもたらしています。
海の酸性化とは、海に溶解した二酸化炭素により、炭酸イオンという物質を減少させてしまうことです。炭酸イオンは貝やサンゴの成長に必要なもので、酸性化によってサンゴ礁が絶滅の危機にさらされています。
問題③海洋資源の乱獲
3つ目の問題は、乱獲です。魚は海にたくさんいるイメージがあるかもしれませんが、そのようなことはありません。事実、世界中に生息する魚の33%は獲りすぎているとまで言われています。
世界的に健康的な食事が流行し、魚を食べる人が増え、魚の捕獲量が増加しています。その結果、十分に利用できる海洋資源は6%まで減少してしまったのです。乱獲が進めば、生物の個体数が減少し、最終的には私達の生活にも悪影響を及ぼすでしょう。
また、乱獲に関しては漁業関係の働き方にも関係があるとされており、別の目標である「働きがいも経済成長も」にもつながる課題です。
現在漁業に従事する人たちは世界で3億人おり、その人たちによって世界の魚を摂取する30億人以上の人々に海洋資源が提供されています。
しかし乱獲により漁業が衰退してしまうと、その人たちの雇用や地域経済へも影響が出てしまいます。
生態系を脅かすマイクロプラスチック
プラスチックゴミは景観の悪さだけではなく、様々な問題につながっています。海の生態系や船舶への影響、環境や漁業の衰退や沿岸地域に暮らす人々の環境の悪化が懸念されています。
■マイクロプラスチックとは?
プラスチックが捨てられるなどして5mm以下の小さな破片になったものを、マイクロプラスチックと呼びます。マイクロプラスチックは、魚や鳥が餌と勘違いして摂取してしまう被害が確認されています。
■マイクロプラスチックの種類
容器や包装に使われるプラスチック以外に、海の生態系への影響が心配されているプラスチックにマイクロプラスチックがあります。マイクロプラスチックとは、5ミリ以下のごく小さなプラスチックのことを言います。このマイクロプラスチックには、「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」の2種類があります。
海洋汚染のゴミの種類
海洋汚染の原因となっているマイクロプラスチックですが、2種類あります。
一つ目は、一時プラスチックと呼ばれる細かなビーズ状のプラスチックです。日用品である洗顔料や歯磨き粉の中に、研磨剤として使用されています。それらは下水処理を通過し、そのまま海に流されています。
二つ目は、二次マイクロプラスチックです。海に流されたプラスチックが紫外線の影響を受けて劣化し、水や岩、砂との摩擦で細かく砕けてしまったものです。
目標14「海の豊かさを守ろう」に対する取り組み
この目標に対する取り組みは、さまざまな企業で行われています。ただ、企業がどのような取り組みを行っているか、知っている方は少ないのではないでしょうか。
そこで、いくつかの企業をピックアップして、取り組み対する実例を複数紹介します。企業の中には、多くの人が知っている有名なところも含まれています。
目標14に取り組んでいる企業とは?
目標14に取り組んでいる企業は、数多くあります。具体的には、味の素株式会社やシャボン玉石けん株式会社、株式会社伊藤園などです。有名な企業も多数取り組んでおり、企業側も目標14に対する意識は高いと言えるでしょう。
また、企業だけではなく、静岡市役所や長崎大学、一般社団法人の日本化学工業協会といった団体も取り組んでいます。その他の企業や団体に関しては、外務省の公式サイトに掲載されているため、気になる方はぜひチェックしてみてください。もしかすると、あなたが働いている会社や団体があるかもしれません。
日本企業における具体的な事例
日本企業における具体的な事例として、ユニー株式会社とエームサービス株式会社を取り上げて紹介しましょう。
総合スーパー「アピタ」を経営しているユニー株式会社では、店頭でプラスチック製の使用済み容器や包装を全店舗で回収したり、回収した容器や包装は再利用しリサイクルしたりなどの取り組みをおこなっています。
会社や工場の社食などでさまざまな料理を提供しているエームサービス株式会社では、パナソニック本社の社員本社にて、日本初のサステナブル・シーフードを提供しています。サステナブル・シーフードに関しては次の項目で紹介しますが、海のことを考えた食品の提供をするという取り組みに挑戦しているのです。
目標14「海の豊かさを守ろう」に対してできること
最後の項目では、今回のテーマに対して個人でもできることを紹介します。今回のテーマに対する取り組みは企業や団体だけではなく、個人でもできることがあります。海に関心がある方やSDGsに関する取り組みをしてみたい方は、今後の参考にしてください。
海のエコラベルをチェックする
個人でできる取り組みとして取り掛かりやすいものに、海のエコラベルが貼られているをチェックすることが挙げられます。エコラベルは主に2つあり、「MSC認証」と「ASC認証」です。
MSC認証は、海洋環境にきちんと配慮した上で魚の獲り方を守っている水産物に与えられるもので、基準を満たしたものだけに貼ることができます。ASC認証は、環境や地域社会に配慮しながら養殖業をしている水産物に与えられるものです。どちらも厳しい審査をクリアした水産物でないと認証を得ることはできません。この2つのラベルが貼られていれば、地球環境に配慮した水産物であると判断できるでしょう。
上記で紹介したラベルが貼られているものは、サステナブル・シーフードと呼ばれます。買い物の際はサステナブル・シーフードを意識しながら水産物を見てみましょう。
きちんとゴミを処理する
ゴミは海洋環境や生物に対して、大きな影響を与えます。だからこそ、ゴミはきちんと正しいところに捨てましょう。海に捨てるのは環境に悪影響を及ぼす上に、違法行為です。当たり前のことですが、守っていない方もいるため、改めて意識しておきましょう。
ゴミを処理する以前に、ゴミを発生させないことも大切です。マイ箸・マイボトル習慣を心がけたり、プラスチックのストローを使わないようにしたりなど、できる限りゴミを発生させないライフスタイルに変えてみましょう。
リサイクルを心がける
持続可能な社会を目指すためにも、リサイクルを心がけましょう。例として、プラスチックごみをきちんと分別することが挙げられます。分別することでリサイクルできるようになり、持続可能な社会へ一歩近づくでしょう。また、ゴミを処理する側としても分別されていれば、効率よく作業できます。
まとめ
今回は、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」の基本情報や取り組みなどについて紹介しました。現代の海は大きな問題をいくつも抱えており、将来的に不安を抱えている状態です。個人でもできることはたくさんあります。今日からでも実践できることから始めて、海の豊かさを守り続けていきましょう。この記事が、海洋問題に関心を持つきっかけとなれば幸いです。