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SDGs未来都市とは?目的や選定された都市の実例を紹介

海沿いの街

「SDGs未来都市」という言葉があるのを知っていますか?

「SDGs未来都市」は、SDGsの17の目標を実現するための活動を積極的におこなっている都市、地方・公共自治体や団体を認定し、SDGsの実現に貢献しようという日本独自の取り組みです。

その目的や未来都市がスタートした背景、実例をご紹介しましょう。

SDGs未来都市とは何か

考える女性

まずはじめに、SDGs未来都市の基本的な知識を知っておきましょう。

SDGs未来都市構想の概要

SDGs未来都市とは、SDGsの目標達成に向けて優れた提案をした都市や地方自治体を選定する、国の事業のことです。

SDGsのスローガンは「誰一人取り残さない」です。つまりSDGsの目標達成には国や企業だけでなく、地方自治体も一丸となって取り組んでいく必要があります。そのために日本が打ち出したのが「SDGs未来都市構想」というもので、未来都市に選ばれた地域や地方自治体の取り組み、成功事例を発信し、国内外に向けてSDGsの啓蒙活動を行っていくのが目的です。

もともと日本にあった「環境モデル都市」

日本では2008年から、温室効果ガスの削減などに貢献している地域や地方自治体を「環境モデル都市」として選出していました。また、社会・環境・経済の3側面で持続可能な活動をおこなっている地域・地方自治体を「環境未来都市」に指定する「環境未来都市構想」も進められていたのです。2020年までに環境モデル都市は23都市、環境未来都市は11都市が選ばれました。

「環境未来都市構想」の理念は、2015年に採択されたSDGsの概念と合致していたのです。そこでより先進的な「SDGs未来都市構想」を提唱するに至りました。

2024年度までに210都市の目標

「SDGs未来都市構想」は、当初2018年から2020年までの3か年計画でした。2017年時点ではSDGs実現につながる活動をおこなう地方自治体はわずか1%だったため、達成目標として30%にまで引き上げることが閣議決定されました。この30%を実現するための活動のひとつが「SDGs未来都市構想」となりますが、2019年11月時点ですでに13%を達成します。そこで2019年12月には、達成目標が「SDGs達成に向けた取り組みをおこなう地方自治体の割合を2024年度中に60%にする」に上方修正されました

達成目標の修正を受け、未来都市の数は「2024年までに210都市」と設定し直し、2020年から2024年までの間に毎年30都市ずつ選ぶ計画になっています。

SDGs未来都市に選ばれるメリット2つ

SDGs未来都市に選定されるため、応募する各都市や地方自治体の数は年々増加の一途をたどっています。選定されるメリットについて、2点紹介します。

政府の強力な支援のもと計画に取り組むことができる

自治体や都市にとっての一番のメリットとして、提案した計画を実行するための助言や支援を有識者や各省庁から受けることができたり、国からの強力なサポートを得ることができることです。

世界共通の目標であるSDGsの目標に向けて、高水準での取り組みが実現可能であり、国内外へのアピールにもつながります。

また自治体SDGsモデル事業に選定されると、上限3,000万円までの補助金が交付されます。そのためには、未来都市の中でも特に一歩進んだ取り組みを認められた「自治体SDGsモデル事業」に選定される必要があり、SDGsを促進する活動にかかった全体マネジメントや普及啓発、事業実施の経費のみが対象となります。もちろん自治体SDGsモデル事業として国内外に成功事例を発信していくための必要経費、という大前提は忘れてはいけません。

多様なステークホルダーの関心を集めることが可能

官民が共同できる場として、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」が設立されています。

このプラットフォームは、自治体や企業、大学や研究機関、NPOやNGOなどがそれぞれに出会い、連携することができる場です。2021年10月時点で、会員数は6,013団体にものぼり、2020年よりも2倍近くに増加しています。

しかし会員数が多いためにマッチングが難しいこと、都道府県ごとに登録数がまばらであることなどから、しっかりとした連携が取れていない問題点があげられます。

そこでSDGs未来都市に選定されることにより、多くのステークホルダーにアピールすることができます。様々な団体と共同することで、地方再生を推し進めることにつながるでしょう。

選定されるためのポイント

おさらいをする男性

SDGs未来都市に選定されるにはポイントがあります。

選定基準と評価項目

SDGs未来都市の選定基準は3つに大別され、評価項目は5つあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 全体計画(自治体全体でのSDGs取り組み)

評価項目は、将来ビジョン、自治体の推進の取り組み、実施可能性、推進体制の4つあります。

2. 自治体SDGsモデル事業(重点的に取り組む先導的取り組み)

  評価項目の5つ目、自治体SDGsモデル事業での取り組み提案があります。

3. 委員による参考意見

各評価項目に割り振られた点数は、毎年異なります。2018年は推進体制の点数は20点でしたが、2020年は30点に増加し、推進体制が重視されています。

選定されるための3つのポイント

SDGs未来都市に選定されるには3つのポイントがあります。

ステークホルダーとの多角的な連携

SDGsの目標達成のためには、国だけではなく、自治体や企業、NGOやNPOなどがお互いに協力し合って進めていく必要があります。

各自の努力だけでは、持続可能な経済成長や地方創生、安心して暮らせるまちづくりなどの環境整備といった様々な課題を解決することは困難です。

市民の積極的な参加

ステークホルダーだけではなく、その都市や自治体に暮らすそれぞれの市民の参加もSDGsの目標達成には不可欠です。

国連の掲げるSDGsのアクションプランでも、各個人にできることが具体的に提示されています。そのため自治体の推進するSDGsの計画では、自治体だけではなくそこに住む市民の主体的な参加も求められます。

SDGsへの取り組みに具体性があるか

日本が掲げたSDGsアクションプランは、2030年までに国をあげて重点的に行っていくべきとされる行動指標です。そのためSDGsの提案が希望的観測ではなく、地方をどのように循環共生型社会にするのか、SDGsの担い手として若い世代や女性が活躍しやすくなるように働き方改革をどのように推進するのか、具体的な行動がポイントとなるようです。

今後は似通った「SDGs未来都市」の計画だけではなく、自治体ごとに特色のある提案も重視されるでしょう。

自治体SDGsモデル事業

SDGsに詳しいビジネスパーソン

地方自治体がSDGs目標達成に向けての取り組みを積極的におこなっていけるように、SDGs未来都市構想がスタートしました。さらに加速するべく登場したのが、「自治体SDGsモデル事業」です。

特に先導的な取り組みをおこなっている10都市

自治体SDGsモデル事業は、SDGs未来都市に選定された地域・地方自治体の中でも特に優れた取り組みを行っている10都市が選ばれます。自治体SDGsモデル事業に選ばれた地域・地方自治体の成功事例を展開することで、より多くの地域・地方自治体の活動を後押しすることを目的としています。

選定基準

自治体SDGs モデル事業の選定基準は特に設けられてはいませんが、「体制づくり」「関係者との連携」「計画の策定・改定」「情報発信による学習と成果の共有」の4つが取り組みに盛り込まれていることはひとつの目安となっています。また、「相乗効果があること」「自律的好循環」であることも評価基準とされていることが多いようです。

選定されると補助金が出る

自治体SDGsモデル事業に選定されると、国から補助金が交付されます。SDGsを促進する活動にかかった全体マネジメントや普及啓発、事業実施の経費のみが対象となりますが、上限3,000万円までの補助を受けることができるのです。もちろん自治体SDGsモデル事業として国内外に成功事例を発信していくための必要経費、という大前提は忘れてはいけません。

SDGs未来都市一覧

川沿いの建物

実際にSDGs未来都市に選定されたのはどんな地域・自治体なのかを簡単にご紹介しましょう。以下は、2018年から2020年度まで選定された都市の一覧表になります。

年度

2018

2019

2020

自治体名

1:北海道

2:北海道札幌市

3:北海道ニセコ町

4:北海道下川町

5:宮城県東松島市

6:秋田県仙北市

7:山形県飯豊町

8:茨城県つくば市

9:神奈川県

10:神奈川県横浜市

11:神奈川県鎌倉市

12:富山県富山市

13:石川県珠洲市

14:石川県白山市

15:長野県

16:静岡県静岡市

17:静岡県浜松市

18:愛知県豊田市

19:三重県志摩市

20:大阪府堺市

21:奈良県十津川村

22:岡山県岡山市

23:岡山県真庭市

24:広島県

25:山口県宇部市

26:徳島県上勝町

27:福岡県北九州市

28:長崎県壱岐市

29:熊本県小国町

1:岩⼿県陸前⾼⽥

2:福島県郡

3:栃県宇都宮市

4:群県みなかみ町

5:埼県さいたま市

6:東京都野市

7:神奈川県川崎市

8:神奈川県⼩⽥原市

9:新潟県附市

10:富

11:富県南砺市

12:川県松市

13:福井県鯖江市

14:愛知県

15:愛知県名古屋市

16:愛知県豊橋市

17:滋賀県

18:京都府舞鶴市

19:奈良県駒市

20:奈良県三郷町

21:奈良県広陵町

22:和歌県和歌

23:取県智頭町

24:取県南町

25:岡粟倉村

26:福岡県

27:福岡県福津市

28:熊本県熊本市

29:児島県崎町

30:児島県徳之島町

31:沖縄県恩納村

1:岩手県岩手市

2:宮城県仙台市

3:宮城県石巻市

4:山形県鶴岡市

5:埼玉県春日部市

6:東京都豊島区

7:神奈川県相模原市

8:石川県金沢市

9:石川県加賀市

10:石川県能美市

11:長野県大町市

12:岐阜県

13:静岡県富士市

14:静岡県掛川市

15:愛知県岡崎市

16:三重県

17:三重県いなべ市

18:滋賀県湖南市

19:京都府亀岡市

20:大阪府大阪市

21:大阪市豊中市

22:大阪市富田林市

23:兵庫県明石市

24:岡山県倉敷市

25:広島県東広島市

26:香川県三豊市

27:愛媛県松山市

28:高知県土佐町

29:福岡県宗像市

30:長崎県対馬市

31:熊本県水俣市

32:鹿児島県鹿児島市

33:沖縄県石垣市

【2018年度】北海道を筆頭に29自治体

SDGs未来都市構想がスタートした2018年は、合計で29団体が選ばれました。SDGs未来都市は都道府県単位での応募も可能となっていますが、29団体中最も多かったのが北海道で4つ、神奈川で3つとなっています。特徴として地域自治体の事情や特色を軸に課題を設定し解決策を明示していたこと、補助期間終了後も自律し継続的に循環できるようになっていることが高く評価されたようです。

中でも北海道は、「北海道価値を活かした広域SDGsモデルの構築」と称して森林資源の循環利用の推進や、アイヌ文化の発信強化、観光事業の促進などに力を入れることを宣言しました。

【2019年度】市民と企業も巻き込む31自治体

2019年には選定された団体は31団体まで増えました。神奈川県からはこの年も2エリアが選ばれ、沖縄県からも応募がきています。沖縄県はサンゴの産地である恩納村を「サンゴの村」にするという宣言を掲げ、地域団体と連携して村を盛り上げる事業を展開しました。

同様に地方自治体が地域住民や地元の企業(ステークホルダー)との連携を強固にすれば達成できる見込みがある団体が多く、実現可能性の高さがこの年の選定評価につながったようです。

【2020年度】計画実現性の高い33自治体

2020年にはさらに数を増やして33団体が選定されました。毎年30都市という目標設定ですが、すでに1年目の不足を補っていることから前倒しでの達成も見えてきています。応募数も2019年の57件を大きく上回る77件となりました。これまで選定された団体と同様に地域の事情や特性に即した内容であり、ステークホルダーとの連携で実現可能性が高い団体が選ばれる傾向にあります。加えて経済価値から戦略的に取り組んでいる団体も多く見受けられたそうです。

この年に選ばれた宮城県石巻市の打ち出した「石巻市SDGs未来都市計画」では、地域で支え合うためのコミュニケーションツールや移動手段を生み出すといった、被災地ならではの事業が計画されています。

自治体SDGsモデル事業都市一覧

並ぶトロフィー

SDGs未来都市の中でも優れた施策を行っているという、自治体SDGsモデル事業も年ごとに見ていきましょう。以下は、2018年度から2020年度までに選定された都市の一覧になります。

年度

2018年

2019年

2020年

都市名

1:北海道ニセコ町

2:北海道下川町

3:神奈川県

4:神奈川県横浜市

5:神奈川県鎌倉市

6:富山県富山市

7:岡山県真庭市

8:福岡県北九州市

9:長崎県壱岐市

10:熊本県小国町

1:福島県郡山市

2:神奈川県⼩⽥原市

3:新潟県附市

4:富県南砺市

5:福井県鯖江市

6:京都府舞鶴市

7:岡粟倉村

8:熊本県熊本市

9:児島県崎町

10:沖縄県恩納村

1:宮城県石巻市

2:東京都豊島区

3:石川県金沢市

4:三重県いなべ市

5:京都府亀岡市

6:大阪府・大阪市

7:大阪府富田林市

8:岡山県倉敷市

9:愛媛県松山市

10:沖縄県石垣市

【2018年度】未来都市に選定された都市も

SDGs未来都市、自治体SDGsモデル事業それぞれ初年度ということもあり、大半はSDGs未来都市にも選ばれた団体となりました。そのため10団体中2団体は北海道、3団体は神奈川県と北海道と神奈川県が半分を占める結果となっています。評価のポイントはSDGsの基本視点を意識し、自律的好循環に向けた事業の実施が期待できる点となっているようです。

特に唯一県単体で選ばれた神奈川県は、『いのち輝く神奈川持続可能な「スマイル100歳社会」の実現』の一環として、住民全員が一生健康的に暮らせる「藤沢サスティナブル・スマート・タウン(FSST)」の実証事業を展開しました。

【2019年度】北から南まで幅広く

初年度の2018年は未来都市にも選定されていた北海道と神奈川県が大半を占める結果となっていましたが、2019年は沖縄県も加わり、北から南までを網羅する結果となりました。特に優れた提案は実現可能性も高く、自律的好循環の仕組みが詳細に記載されていたこと、短期的な効果だけでなく中期的な視点も含まれていたことなどが高く評価されたようです。

この年、「熊本地震の経験と教訓をいかした地域(防災)⼒の向上事業」を掲げた熊本県熊本市が自治体SDGsモデル事業に選ばれました。ライフラインや防災手段を見直し、「上質な生活都市」を目指す取り組みです。自治体SDGsモデル事業に選ばれたことをきっかけに、市民のSDGsへの認知度を高めるためのイベントや企業との連携もスタートしました。

【2020年度】評価側を悩ませた質の高さ

3年目ともなると応募する自治体のレベルが上がったため、評価する側はかなり悩んだといいます。SDGs未来都市に選ばれた自治体と同様の基準を満たしていることはあたりまえとなり、各団体の首長のコミットメントの強さが評価基準になったといっても過言ではないかもしれません。京都府、岡山県、沖縄県の3都市は2019年から連続で選定されています。

中でも沖縄県はこの年、『石垣SDGsプラットフォームを活用した「離島におけるSDGs課題解決モデル(=石垣SDGsモデル)」構築事業』という、離島ならではの課題をSDGsを活用して解決する取り組みを提案しました。

まとめ

町

SDGs未来都市についてまとめました。

SDGsという新しい言葉に、また新しい概念が出てきてもうまく飲み込めない、と思われる方もいるかもしれません。しかしSDGs未来都市構想は、日本ではすでに2008年に前例がスタートしていたこと、その理念がアップデートされただけに過ぎないのです。より世界的により広い視野が求められる課題となったSDGsは、SDGs未来都市構想を促進することで達成に近づくでしょう。

自分には縁遠いと感じるSDGsも、身近な地域・地方自治体がかかわっていると知ると親近感もわいてくるのではないでしょうか。また、地域・地方自治体がSDGsの課題に取り組んでいき、その課題を解決するためには1人ひとりの力が必要不可欠です。といっても特に難しいことをするわけではなく、誰もが住みよい環境を整えることが一番の近道といえるでしょう。

これをきっかけに、ご自身の地域がSDGs未来都市にどのようにかかわっているか、これからどのようにかかわっていくべきか、ぜひ考えてみてくださいね。