SDGsの目標7は、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。
エネルギーの発達により私たちの生活は豊かになった一方で、近年は環境が脅かされたり資源が枯渇したりといった問題を引き起こしています。SDGsの目標のひとつとして掲げられたからには、もはや看過できない向き合うべき課題になっているということです。
この記事を読んで、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を達成するために必要なことは何か、自分たちにできることは何か、考えるきっかけにしてください。
目次
SDGsは国連が定めた世界の共通目標
はじめに、SDGsの基本情報を簡潔に確認しておきましょう。SDGsは国連加盟国全体で取り組むべきと採択された「持続可能な開発目標」、いわば世界の共通目標です。
17の目標と169のターゲット
SDGsでは世界各国で起きている諸問題を解決するための指針として、17の達成目標を設定しました。それをさらに細分化して169のターゲットにまとめ、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指しているのです。2016年から2030年までの15年間で達成することを決め、毎年各国の進捗状況を確認しながら進めています。
ミレニアム開発目標(MDGs)の後継
実はSDGsは、2000年に採択されたミレニアム開発目標の後継にあたります。Millennium Development Goalsの頭文字をとってMDGsと呼ばれており、8つの目標が定められていました。当時は2000年から2015年までの15年間と期限が設けられ、2015年の時点で一定の成果が見込めたこともあり、サステナビリティの価値観を取り入れたSDGsが新たに採択されることになったのです。
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のターゲット
外務省のホームページで、国連アジェンダの日本語訳が確認できます。
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のターゲットを確認しましょう。目標の背景にどのような課題があるのかを読み解くことができます。
3つの達成目標
7-1:2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
外務省ホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402.pdf)
7-2:2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7-3:2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
日本では技術が発達していることもあり、すべての国民がエネルギーの恩恵を受け、便利な生活を送っています。しかし世界全体を見れば、技術不足や貧富の差によって適切なエネルギーサービスを利用できない環境にいる人は多く、7-1はそうした人たちにも平等にエネルギーを行き渡らせることを目標としています。
7-2、7-3からは、将来的にエネルギー資源が枯渇すると予想されていることがわかります。人口が増加し、すべての人に平等にエネルギーがいきわたるようにしたら、当然有限のエネルギー資源は枯渇してしまうでしょう。エネルギー効率を改善して使われるエネルギー量を少なくすると同時に、枯渇の心配がない再生可能エネルギーの活用を促進することが急務となっています。
2つの実現方法
7-a:2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
外務省ホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402.pdf)
7-b:2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。
すべての国がエネルギーをつかえるようになるためには、国際協力が必要不可欠です。国同士が技術と資金を提供しあいインフラを構築することはもちろん、支援を受ける国も自力で立ち上がれるよう、技術向上のサポートをしていくことが求められています。
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の現状
日本では当たり前にあるエネルギーですが、世界では具体的にどのような現状があるのか、確認しておきましょう。
7.7億人が電気をつかえていない
世界の約7.7億人が電気をつかえていないというデータがあります。
電気をつかえない地域の人たちは、薪や炭を燃やして灯りにつかったり料理をしたり、暖をとったりしているのです。薪や炭から出る煙や煤によって健康を損なうことも問題視されていますし、遅い時間の仕事や勉強ができないため、貧富の差や教育の差が生まれる原因ともなっています。
参照:IEA2021
資源には限りがある
現在つかわれているエネルギーの多くは石油、石炭、天然ガスといった化石エネルギーです。化石エネルギーには限りがありますが、今のままのペースでつかい続けると100年後には枯渇してしまうといわれています。
また化石エネルギーをつくり出すと二酸化炭素が発生するため、オゾン層を破壊してしまい地球温暖化を加速させることにもつながるのです。化石エネルギーに頼り切ったままでいると、資源が枯渇してエネルギーがつかえなくなるだけでなく、地球環境をも破壊して生活に支障をきたすことになるでしょう。
再生可能エネルギーの普及が急務
有限の化石エネルギーに代わって、再生可能エネルギーを利用していくことが求められています。バイオマス、太陽光、風力、地熱、水力といったエネルギーが再生可能エネルギーとして注目されるようになりました。
これらは使用後も再利用が可能なだけでなく、利用する際に二酸化炭素が発生しないため、環境にやさしい「クリーン」なエネルギーとされています。
目標7の達成をサポートするクリーンエネルギーとは
目標7を達成するにあたり、重要なカギとなるのが再生可能なクリーンエネルギーです。クリーンエネルギーについて少し詳しくご紹介しましょう。
環境にやさしいエネルギー
クリーンエネルギーは再利用が可能なため資源が枯渇する心配がなく、利用する際に二酸化炭素や硫黄酸化物といった環境に悪影響を与える物質を生み出すこともありません。そのため環境にやさしいエネルギーといわれています。クリーンエネルギーに該当する風力や水力、太陽光といったエネルギー源は世界中のどこにいても比較的手に入りやすいものであり、開発途上国でも扱いやすいエネルギーであることも期待されている一因でしょう。
普及しない原因は?
クリーンエネルギーに価値があることはわかっていますが、現実にはSDGsの目標に設定されるほど普及していません。普及が遅れている原因は主に3つあります。
1つ目は発電コストの問題です。クリーンエネルギーは設備費用が高い上に天候に左右されやすく、発電効率が悪いという欠点があります。必然的に発電コストは高くなってしまい、現状はヨーロッパでも利用者に負担させていることでようやくつかえている状態です。所得平均が低い開発途上国での利用は、現段階では現実的とはいえないでしょう。
2つ目は、電力系統が不足していることです。クリーンエネルギーをつかって発電しても、送電線につなぐことができずに電力があまってしまうということが起きています。日本ではいまだに従来から使われていた火力発電が輸送容量を確保しているために、他の電力の輸送が確実におこなわれません。火力発電からの切り替えがうまくできるか、クリーンエネルギーが発電事業として成り立つかどうかが問われているのです。
3つ目は蓄電池が高価格であることです。不安定な発電をサポートするには蓄電池は効果的ですが、価格が高いことがネックとなっており、やはり現状では開発途上国への提供は厳しいといわれています。
日本にいる私たちができること
中国やアメリカ、デンマークでは既に再生可能なクリーンエネルギーの利用が進んでおり、使用率は世界各国の中でも突出しています。一方日本では前述したように長年つかってきた火力発電からの切り替えがうまくいっておらず、クリーンエネルギーの普及は他国に比べて遅れているといわざるをえません。しかし、化石エネルギーのほとんどを輸入に頼っている日本にとって、エネルギー資源の枯渇問題は早急に取り組まなくてはいけない課題でしょう。
すぐにでも私たちができる取り組みとして、日ごろから節電を心がけることが挙げられます。エネルギーについて正しい知識を身につけ、他国の施策について知っておくのもいいでしょう。今ある貴重な資源を大切につかいながら、どのようなアプローチが必要とされるかを考えていくことが重要です。
「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」への企業の取り組み
目標7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に対して、日本企業がおこなっている取り組みについてご紹介しましょう。
パナソニック株式会社
パナソニック株式会社は、世界の無電化地域にソーラーランタンを寄贈する「ソーラーランタン10万台プロジェクト」をおこなっています。太陽光を充電することで使用できるソーラーランタンで、2018年1月には30か国に対し目標である10万台のランタンを寄贈し終えたと発表されました。
川崎重工業株式会社
輸送機器製造の大手、川崎重工株式会社は、自動車の排気ガスが常々大気汚染の原因となっている問題に取り組み、二酸化炭素を排出しない水素エネルギーの実用化を目指しています。また、低燃費・低環境負荷の鉄道車両、船舶、ボイラー、航空機やエンジンの開発を積極的に行い、SDGsに貢献する企業のひとつとして注目されるようになりました。
いちごECOエナジー株式会社
クリーンエネルギーの中でも低コストで設置しやすいのが太陽光発電です。いちごECOエナジー株式会社はつかわれなくなった広大な土地を活用した太陽光発電所をつくりました。日本には、開発途中で終わってそのまま放置されてしまっているリゾート地やゴルフ場が散在しています。いちごECOエナジー株式会社はそうした土地の利用料を支払って太陽光発電所を設置し、地域の人たちとともにクリーンエネルギーの普及に努めているのです。2020年3月時点で全国に46か所の太陽光発電所があり、全部で約140メガワット、約4万6,000世帯分の電力を生み出すようになりました。
まとめ
SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」についてまとめました。
世界にはいまだに未電化の地域があり、すべての人が平等にクリーンなエネルギーをつかえるようになるためには技術の向上はもちろんのこと、各国の経済状態の改善も求められています。エネルギーを十分につかえる日本でできることは、世界の現状を知り、可能な限り節電に努めることでしょう。 普段の生活でも、少しずつ気にかけてみてくださいね。