事業計画書は法人だけのものではありません。むしろフリーランスと呼ばれる個人事業主の方こそ事業計画書は作るべきといえます。
では、なぜ事業計画書が必要なのかご存じですか?また、そもそも個人事業主における事業計画書とは、どのようなものなのでしょうか。
当記事では個人事業主の方が事業計画書を作成する理由や作成にあたって記載するべき6つの項目などを紹介します。事業計画書の重要性を正しく理解し、今後の経営や事業展開に活かしていただければと幸いです。
目次
個人事業主における事業計画書とは何?
事業計画書とは、経営者が抱くビジョンや夢を実現するための具体的な計画書です。事業目標や達成手段、事業運営の収支計画や資金調達計画などを整理して記載します。
事業計画書は事業全体を具体化させたものであり、これによりビジョンや夢の実現可能性を客観視できるでしょう。銀行や投資家などから融資を受ける際にも返済能力のエビデンスとして利用可能です。
事業計画書が個人事業主に必要な理由
なぜ事業計画書が個人事業主にも必要なのでしょうか。この項目では必要となる3つの理由について解説します。
事業の精度が増す
最近はフリーランスと呼ばれる個人事業主が増えています。インターネットの普及により、パソコンが1台であれば稼げる時代になったことが要因の1つでしょう。
ただし、個人事業主の方は事業計画書を作成しないケースの方が多いのも事実です。しかし、個人事業主の方こそ事業計画書の作成をおすすめします。
なぜなら事業の精度が増し、売上拡大につながる可能性が高いからです。中小企業庁が発表した「2020年版小規模白書」によれば、事業計画書を作成していると回答した方は全体の47.5%に留まりました。
一方で、中規模事業者で作成していると回答した方は69.6%に上りました。この数字からも、個人事業主で事業計画書を作成している方が少ないことが分かります。事業計画書を作成は自社の強みや弱みを理解でき、効果的な経営へとつながるのです。
銀行から融資を受ける際に必要
銀行が融資できる相手かどうか判断する基準は、返済能力の有無です。そのエビデンスの1つとなるのが事業計画書といえます。
事業計画書には収支計画や資金調達計画などを記載するため、返済能力を具体的に伝えることができるでしょう。また銀行だけでなく、ベンチャーキャピタルなどの投資家から資金調達する際も間違いなく提出を求められます。一度作成しておけば、汎用的な利用も可能です。
事業の全体を客観視できる
事業計画書とは、事業主のアイデアなどを具現化したものです。具現化することで、事業全体を客観視できます。
例えば頭の中にビジネスプランがあったとしても、それは漠然している場合が多いでしょう。しかし事業計画書を作成し具現化できれば、そのビジネスプランの課題や問題点が見えてきます。
その問題や課題を1つずつ潰していくことで、より精度の高い事業運営が可能となるのです。
事業計画書に必要な6つの項目
ここでは、事業計画書に必要となる6つの項目について紹介します。それぞれ重要な役割を持つためしっかりと確認しておきましょう。
事業のおおまかな概要
事業のおおまかな概要について記載しましょう。概要に記載すべき項目は次のとおりです。
- 屋号や会社名
- 所在地
- 経営者の経歴
- 事業内容
- 主要な取引先など
事業に関わるあらゆる情報を記載します。
事業の理念や創業の精神
次は事業の理念や創業の精神などです。なぜこの事業を始めたのかいう、起業の経緯部分になります。
事業を通しての社会貢献の方法を記載することで、より事業イメージを説明しやすくなるでしょう。事業の理念や創業の精神は経営の土台となる部分です。
この部分がしっかりと定まっていなければ、あらゆるビジネス領域に手を出し、事業の失敗につながるおそれがあります。事業の理念や創業の精神は、融資先に対して熱意や本気度が伝えるためにも重要な部分となるでしょう。
6W2Hに基づく事業計画
個人事業主が事業計画を立てる場合は、「6W2H」をもとに作成するのが良いといわれています。具体的な流れは次の通りです。
- Why:なぜその事業を行うのか
- What:どのようなサービスを提供するのか
- Where:どの業界をターゲットにするのか
- Whom:どういった顧客をターゲットにするのか
- How to:販路はどう確保するのか
- When:目標の達成期限やタイミングの設定
- Who:受注した仕事を誰が担当するのか
- How Much:売上目標を達成するための価格や取引条件の設定
自社の強みと弱みを分解
市場における競合を分析することで自社の強みと弱みを知ることができます。またそれを分解すれば次のアクションが明確になり、顧客獲得への戦略立てに役立つのです。
最低でも3社以上の競合をピックアップし、さまざまな観点で比較する必要があります。比較すべき点は4つのPです。
- Product(商品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販売戦略)
4P分析とも呼ばれ、マーケティング手法の1つであり、自社の立ち位置を明確にしてくれます。
事業価値を表す市場分析
市場分析を行うことで自社の事業価値を知ることができます。市場価値は常に変化しており、一定にはなりません。
市場の動向や将来性、希少性などを正確に把握し、常に市場価値を高める戦略を取る必要があります。
3年〜5年先までのキャッシュフロー計画
キャッシュフローとはお金の流れを可視化したものです。キャッシュフロー計画は資金繰りに関する計画を指します。
3年~5年先までのキャッシュフロー計画を行うことが一般的です。融資にあたってもキャッシュフロー計画を重要視される場合が多いでしょう。
そのため正確な情報をもとに、実現可能なキャッシュフロー計画を作成しなければなりません。曖昧な予測や計画ではなく、融資の審査も通りにくいです。
自社を取り巻く情報を細かく収集し、現実的な計画を立ててください。
まとめ
ここまで、個人事業主が事業計画書を作るべき理由や記載すべき6つの項目について紹介しました。ご紹介したように個人事業主の方が事業計画書を作成するメリットはあっても、デメリットは存在しません。
事業の精度を上げ、売上増加につながる事業計画書はぜひ作成することをおすすめします。しかし事業計画書の書き方には明確な決まりがなく、どのような情報を記載するべきか困ることもあるでしょう。
その場合には、当記事が紹介した記載すべき6つの項目を参考にしてみてください。現状は作成をしていないとしても、事業の拡大に伴って作成を余儀なくされるかも知れません。
作成せざるえない状況になってから準備をするのではなく、これを機会に事業計画書を作成してみてはいかがでしょうか。質の高い事業計画書は売上が増加につながります。