近年、大学生の起業が注目を集めています。マイクロソフトやFacebookをはじめ、日本でも大学生が創業して成功を収めている事例は少なくありません。
大学生が起業する方法や適している仕事内容など解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
大学生の起業とは?
世界的に見て、大学生が起業して成功している例は豊富です。多くの学生が起業を目指し、実際に取り組みを始めています。
その中で、日本の大学生は起業についてあまり意識が高いとはいえません。ここでは、日本の大学生の起業に対する意識や、実際にどのような起業が行われているのかなど、日本の学生起業の現状について確認していきましょう。
学生起業の現状
2016年、世界50か国の学生を対象に行われた大学生の起業意識調査では、卒業5年後に起業したいと考えている学生は世界全体で約40%に近いのに対し、日本では9%に満たない数字でした。
また、18~29歳の若者を対象にした調査では、起業への関心がある日本の若者は約33%という結果になっています。インドでは約88%、アメリカは約75%と高く、日本はその半分にも満たない数字です。このような結果を見る限り、日本の大学生は起業への関心がまだまだ低いというのが現状です。
その一方で、中小企業庁が行った調査では、「起業を希望している」もしくは「具体的に起業準備を行っている」という学生は、全体に占める割合としては上昇しているという結果が出ています。全体的に見て学生の起業への関心は低いながらも、起業への意識は徐々に高まっている傾向といえるでしょう。
参考:「大学生の起業意識調査レポート」
参考:アムウェイ「グローバル起業家精神調査レポート」
参考:中小企業庁「我が国の起業の実態」
ベンチャー企業が多い
大学生の起業で多くを占めるのが、ベンチャー企業です。ベンチャー企業とは、革新的なアイデアや技術をもとに新しいビジネスを展開する企業を指します。大学での研究など自身が得意とすることを事業の目的にして、これまでになかった斬新なアイデアを展開する企業も少なくありません。特にITの分野では目覚ましい活躍を見せている学生起業家も多く見られます。
大学生が起業するメリット3つ
大学生の起業は、一般的な起業にはない次の3つのメリットがあります。
- リスクが少ない
- 事業展開がしやすい
- 経験を積み人脈が広がる
たとえ起業に失敗したとしても実際に会社を経営したという経験は糧となり、次の挑戦の成功確率を高めます。ここでは、大学生が起業することでどのようなメリットがあるのか詳しく紹介しましょう。
1.リスクが少ない
大学生の起業はコストがかからず、リスクも少ないのがメリットです。大学の校舎を利用すれば事務所を構える必要がなく、維持費もかかりません。設立に際しての費用を抑えた分を事業に投資して、より早い成長も見込めるでしょう。
学生起業の場合は自身のアイデアや研究内容を事業とする場合も多く、大きな資金を必要としないケースも少なくありません。資金繰りの心配をせずに起業できることもあり、借金を負うリスクも避けられます。
また、万が一起業に失敗に終わっても就職という道があり、採用の場でも起業の経験はプラスの評価に働くでしょう。
2.事業展開がしやすい
大学生の起業では、同じ大学生など若者をターゲットにした事業展開がしやすいのもメリットです。同じ世代として、ニーズを把握しやすいでしょう。市場の分析や顧客調査などでも、学生としての強みを活かしたビジネス展開ができます。
また、大学生の起業には、大学での研究成果をもとにした大学発ベンチャーが多いのも特徴です。斬新なアイデアの製品により新しい市場の創出を目指す「イノベーションの担い手」として、大いに期待されています。
経済産業省でも、大学発ベンチャーの基本情報などを掲載したデータベースを公表しているのが特徴です。関連する事業者とのマッチングや、大企業、ベンチャーキャピタルなどからの支援を促しています。
3.経験を積み人脈が広がる
起業により、様々な経験が積めるのも大きなメリットです。会社設立に始まり、経理や営業、総務、資金調達、組織づくりなど、一般の学生には経験できない経営実務を一度に体験できます。教室での勉強だけでは得られない経験を積むことにより、多くの学びがあるでしょう。
また、同じ学生起業家をはじめとする、広い人脈を築くこともできます。大学生の起業家は企業の経営陣や教授などの支援も受けやすく、交流する機会も増えてくるでしょう。
大学生が起業するデメリット2つ
大学生の起業はメリットが多いものの、デメリットも存在します。学業との両立や経験が少ないなど、学生ならではの課題です。大学生の起業家には皆共通してあるデメリットで、お克服することは可能です。
起業前に問題点も把握しておくことで、あらかじめ対策を立てやすくなるでしょう。ここでは、主なデメリットを2つ紹介します。
1.学業と両立しづらい
当然ながら、大学生の本業は学業です。起業により会社運営に時間をとられると、学業との両立が難しくなるでしょう。特に事業が順調に進んでいる場合、忙しくなって卒業が難しくなる可能性があります。
一方、学業との両立を意識すると、事業に手が回らず思うように業績が伸びないといった状況になりかねません。板挟みのような状態になりがちです。
2.経験や専門知識が少ない
大学生は社会での経験が少なく、専門知識も多くありません。そのため、一般的には社会的な信用を得にくいのが実情です。資金が必要な場合でも、金融機関からの融資は難しいかもしれません。
そのようなデメリットを少しでも解消するには、しっかりした事業計画を作り、将来性のある事業であることを示すのがよいでしょう。すでに活躍している学生起業家などにアドバイスを求め、学ぶこともおすすめします。
大学生が起業する方法
起業といっても、直ちに法人を設立する必要はありません。個人事業主であれば、屋号を決めて開業届を提出するだけで起業ができます。
もちろん、はっきりしたビジョンや事業計画があり、初めから会社としてスタートしたいというのであれば、設立手続きをして会社を立ち上げるのもよいでしょう。ここでは起業する方法について、準備段階と起業後に分けて説明します。
準備段階
起業の準備段階では、具体的な目標を設定して事業計画書を作成します。事業計画書とは、事業の内容やターゲット、売上計画など事業を行ううえで必要な情報をまとめたものです。
事業計画書は今後の方向性を示すために必要で、会社の信用力を高める役割も果たします。融資を受ける場合には必ず必要になり、取引相手や投資家に説明する際にも役立つ資料です。
また、起業前は少しでも社会経験を積むため、インターンシップに参加するとよいでしょう。自分が始めようとする業種を選び、できれば長期で一連のプロジェクトに関わるのがおすすめです。
起業後
起業後に設備投資や広告などを行う場合、ある程度の資金が必要になります。不足する場合は、調達しなければなりません。大学生の場合は金融機関から融資を受けるのは難しく、資金調達方法としては以下のものが考えられます。
- ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から集める
- クラウドファンディングを行う
ベンチャーキャピタルとは、成長が見込まれる会社に投資してハイリターンを得ることを目的とする組織です。エンジェル投資家は、設立間もない会社に資金援助する富裕な個人投資家を指します。クラウドファンディングは、ネット上で不特定多数から資金援助を募る、新しい資金調達方法です。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社に合うものを見極めて利用するのがよいでしょう。
大学生の起業に向いている4つのビジネス分野
大学生の起業では、大学生という特性を活かせる分野があります。同じ世代としてニーズがわかる若者をターゲットにした分野、学生が得意とするIT関連、専門知識がなくても勝負できる分野、コストを必要としない分野などです。
そのような事業に特化して進めることで、成功を収めることが可能になるでしょう。それぞれ紹介します。
1.若者をターゲットにした分野
同じ若者をターゲットにした分野なら、ニーズがよくわかります。特別なリサーチをせずに的確な需要を把握できるため、他の競合と差別化できるでしょう。誰も参入しないニッチなニーズを見つけ、新しい市場を開拓できる可能性があります。
商品を友人に試してもらう、SNSで拡散してもらうなど、効率的なマーケティングを行うこともできるのが強みです。
学生や若者に照準を絞る場合、次のようなアイデアがあります。
- レポートや宿題のサポート
- コンテストなどイベントの運営
- 就活のアドバイス
レポートや宿題のサポートは、小学生から大学院生まで幅広い対応が可能です。イベント運営は、音楽や演劇などのフェス、クリスマスといった行事に企画するパーティーなどで、多くの参加が見込めるでしょう。就活のアドバイスも、同じ学生の視点によるアプローチで、転職エージェントとは違ったサービスの提供が可能です。
2.IT関連の分野
IT分野が得意な大学生はもちろん、そうでない場合も学生は知識や技術の吸収が早いので、IT関連の分野はおすすめです。現在の若者は生まれたときからIT製品が普及しており、それらが当然にある環境に育っています。そのような世代をデジタルネイティブ世代(Z世代)と呼んでおり、IT関連には強みを発揮するでしょう。
また、IT関連は変化が激しく、対応していくには思考の柔軟性がなければなりません。若者には、既存の知識にとらわれず変化に対応できるだけの柔軟性があります。
3.専門知識を必要としない分野
専門知識の少ない大学生は、自分の得意とする内容で活躍できる分野が向いています。家庭教師や学習塾の講師など、アルバイトをしていた人もいるでしょう。そのような仕事であれば比較的準備に時間もかからず、すぐに始められます。
また、商品やサービスのネット販売も専門知識が不要な分野です。ただし、競合が多い分野のため、利益を出すためには他社との差別化を図る必要があるでしょう。
4.コストの少ない分野
資金力の少ない大学生は、初期費用や固定費が少ない分野がおすすめです。一例として、次のような仕事があります。
- Webサイトの作成
- 翻訳サービスや文書の作成
- コンテンツビジネス
IT関連にも関わりますが、パソコンがあれば展開できる事業の場合はコストがかかりません。コンテンツビジネスとは、自分の知識や技術などをPDFファイルや音声、動画などにまとめたものです。これをネットで販売して集客の仕組みを自動化すれば、コストをかけずに運営できます。
大学生が起業した3つの事例
これまでに、大学生が起業して成功した事例はたくさんあります。マーク・ザッカーバーグ氏がハーバード大学在学中に立ち上げたFacebook、ビルゲイツ氏が大学在学中、ポール・アレン氏とともに創業したマイクロソフト社などが有名です。
日本でも、大学生が起業して成功している事例は多く、斬新なアイデアで新しい商品やサービスを生み出しています。一例を紹介しましょう。
1.株式会社Gunosy
福島良典氏が東京大学在学中に創業した会社です。情報キュレーションサービス「グノシー」を運営しており、ネット上に存在するさまざまな情報を独自のアルゴリズムで収集、最適化してユーザーに届けています。
2015年に東証マザーズ、2017年には東証1部に上場を果たしました。主な株主であるKDDIとは事業面での連携も進め、「auサービスToday」などの無料アプリを展開しています。
2.株式会社リブセンス
村山太一氏が早稲田大学在学中に設立した会社です。斬新な視点をもった求人情報サイトの運営を行なっています。
成功報酬型で適職を提案する「マッハバイト」「転職ナビ」、口コミによる企業情報の透明化やマッチング精度の向上を図る「転職会議」などを展開。不動産領域にも事業を広げ、IT技術を駆使した消費者への情報提供で他社との差別化を図っています。2011年には東証マザーズへの上場を果たすなど、成長を続けている会社です。
3.株式会社PoliPoli
伊藤和真氏が慶應義塾大学在学中に立ち上げた会社です。政治家と市民のコミュニティアプリ「PoliPoli(ポリポリ)」を運営しています。政治家が分かりやすく書いた政策から共感するものを見つけ、さまざまな方法で応援をするアプリです。
政策は時代のニーズに合わせて各種のカテゴリーが設けられ、実現までの進捗状況も確認できます。選挙時にはメディアとタイアップして市民との議論を配信するなど、政治コミュニティの形成を促進。市民の政治参加という競合の少ない市場を開拓することで、成功を収めています。
まとめ
大学生の起業には、リスクが少ない、事業展開しやすいなどメリットがたくさんあります。学業との両立が難しい側面もありますが、上手に時間配分することで事業運営を進めることは可能です。
自分に向いている分野を見つけ、事業計画を立てながら進めていくのがポイントです。起業に興味のある大学生は、すでに活躍している起業家にも相談しながらアイデアを考えてみるとよいでしょう。