起業時において資金をどう確保していくかは非常に重要です。なぜなら、起業してから数年間は、融資を受けにくい状況にもなりかねないからです。
どのような状況下でもコストは必要となり、事業の継続に大きな影響を及ぼします。当記事では起業時における資金調達の概要と種類、必要となるパターン、代表的な資金調達方の方法などを紹介します。
当記事を参考にして数ある資金調達方法を理解し、今後の資金調達の参考としてください。
起業時の資金調達とは?
起業にあたり、外部から資金を調達することを「資金調達」といいます。資金調達はその後の経営にも影響する重要な経営戦略の1つです。
必要資金や返済期間などを考慮し、経営者自らが総合的に実施可否を判断する必要があります。資金調達には大きく分けて「短期資金」と「長期資金」の2種類があります。
「短期資金」とは返済期間が1年未満の場合を指しています。この場合、利息が高くならないのがメリットといえます。その反面、余裕のある返済計画を立てておかないと資金回収よりも前に返済期日を迎えてしまい、資金ショートを起こす可能性もあるのです。
短期資金として借り入れには次のようなものがあります。
- 法人税
- 年単位の決算資金
- 繁忙期の仕入れ
- 閑散期の固定費
一方、返済期間が1年以上となるのが「長期資金」です。返済期間が長いため、短期資金よりも余裕を持って返済できます。
しかし高金利な場合が多く、返済期間が長いため支払い利息が多くなりやすいのがデメリットと言えます。長期資金として借り入れるものには次のようなものがあります。
- 土地や建物の購入
- 設備投資にかかる資金
- 仕入れなどの運転資金
経営上で必要な運転資金などは、長期資金で借り入れるのが一般的です。短期資金に比べ返済額は高くなるものの、資金ショートは防げる可能性が高いでしょう。
短期資金ばかりの資金調達は返済不能に陥る可能性もあるため、十分に注意す鶴必要があります。短期資金と長期資金のどちらで借り入れるかは、都度判断する必要があるでしょう。
起業時の資金調達の種類
資金調達には様々な方法があります。ここでは起業時に使える資金調達の4つの方法について見ていきましょう。
自分で資金を拠出する
自ら開業資金を拠出する方法は「自己資本」と呼ばれています。この方法はどこからもお金を借りていないため、もちろん返済義務もありません。
そのため、資金繰りが安定するというメリットがあります。ただし自身で資金拠出するということは、すなわち貯蓄を削ることです。
高額な資金調達が必要な場合には、この方法は現実的ではありません。また、自分以外に株主が資金を拠出する場合も自己資本として分類されます。
こちらも将来的な返済義務は発生しません。ただし株主の権利として、経営に対しての意見をされる場合もあります。また株主となる人を見つけるのも容易ではありません。
元金と利息が発生する「融資」
「融資」は起業時における資金調達方法で、最も一般的といえます。銀行や信用金庫などから借入金として融資を受け、その資金を運転資金とするのです。
この方法はまとまった資金を確保しやすい反面、利息を含めた返済義務を負うことになります。金融機関や金利、返済期間によっては利息が高くなる場合もあるでしょう。
実現可能な返済スケジュールを立て、計画的に借り入れを行う必要があります。そのためにも入念に事業計画を練り、返済可能な範囲で融資を受けるようにしてください。
株式を発行する「出資」
起業時に株式を発行することで、出資を募る資金調達方法です。ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家からの2種類の出資方法があります。
詳細については「起業時に使える資金調達の方法10選」で後述していますので、こちらも併せて確認してください。
国や自治体からの補助金や助成金
国や自治体からの補助金や助成金を利用することも資金調達方法の1つです。いずれの場合も受給条件を満たしていれば、誰でも申請できます。
助成金は申請すれば必ず支給されますが、補助金は申請しても支給されない可能性もあるため注意しましょう。また受給条件や要項もそれぞれ異なるため、申請を検討する場合は事前の内容確認をおすすめします。
補助金や助成金を管轄するのは経済産業省や厚生労働省です。代表的な制度については後述しているのでそちらも併せて確認してください。
また地方自治体にも独自の支援制度がある場合もあるので、居住地の自治体情報をチェックしてみましょう。
資金調達が必要となる3パターン
資金調達が必要となるのは、どのようなシーンに多いのでしょうか。起業時はもちろんのこと、起業後でも資金調達が必要となるケースがありえるでしょう。
この項目では、資金調達が必要となる代表的な3つのパターンを紹介します。
パターン1.起業をする時
起業時には資金調達が必要となる場合が多いです。事務所の確保や設備投資など、事業内容によっては多額の資金が必要となる場合もあります。
また起業したばかりの状態は経営が不安定なこともあり、安定的な収入が得られないこともあるでしょう。その場合も、家賃や水道光熱費などの固定費はコストとして発生します。
経営が軌道に乗るまでの運転資金を確保する目的としても、起業時の資金調達は非常に重要です。
パターン2.事業規模を拡大する時
事業がある程度安定してくれば、事業規模を目指す方も多いです。しかし事業拡大にはそれなりの資金が必要になります。
新たな雇用や設備投資などの多くの資金が必要となれば、資金調達をしなければなりません。ただし事業拡大にはリスクがあることも把握する必要があります。
計画的かつ実現性の事業拡大を目指すことが重要です。
パターン3.運転資金が確保できない時
運転資金とは、家賃や人件費光熱費など事業継続に必要な資金を指します。運転資金が確保できなければ、もちろん事業を継続できません。
その対策として資金調達を行う場合もあります。ただし今後の改善が見込めない場合には、資金調達ができない場合もあるかもしれません。
その場合は在庫削減や債務期間の見直し、固定費の削減など収支の見直しを図るべきでしょう。
起業時に使える資金調達の方法10選
ここでは起業時の資金調達に使える10個の方法について紹介します。
「出資」1.ベンチャーキャピタル
「ベンチャーキャピタル(VC)」とは今後大きな成長が見込める未上場の企業に対し、資金投資をするファンドのことです。ベンチャーキャピタル側は企業価値の高まりから生まれた利益に期待して投資します。よって、融資のように返済義務が発生しない点はメリットとなるでしょう。
「出資」2.エンジェル投資家
「エンジェル投資家」もベンチャーキャピタルと同様に投資による資金調達方法の1つです。エンジェル投資家とは個人投資家ともいいます。
将来に期待できる企業や起業家に対して出資をするのです。エンジェル投資家による資金調達は金融機関よりも多額の資金を集められる可能性があります。
また経営に関するアドバイスを受けられる場合もあるでしょう。ただし資金調達の中ではハードルは高く、投資に見合うだけの企業でなければなりません。
「補助金・助成金」3.創業・第二創業促進補助金
「創業・第二創業促進補助金」とは、経済産業省が中心となる補助金制度の1つです。創業または事業継承後に要した経費の2/3、または200万円まで補助を受けられます。
補助金であるため原則返済も不要で、創業後でも申請可能です。ただし補助対象となる経費に限定があったり、募集期間や条件があったりするなど誰でも受けられるものではありません。
また補助金は後払いとなるため、今すぐ資金を要する場合には補助金が支払われるまでつなぎ融資が必要です。
「補助金・助成金」4.小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」は、従業員数の少ない企業を対象にした補助金制度です。条件は業種や業態によって異なります。
卸売や小売、サービス業の場合は従業員数が5人以下、その他の業種の場合は20人以下の企業のみが補助対象です。条件は異なるものの、補助額は業種に関係なく一律50万円が支給されます。
「融資」5.日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは起業家や中小企業を対象に融資を行う政府系の金融期間です。「低金利で融資を受けられる」「民間銀行よりも融資を受けやすい」といった資金調達におけるメリットがあります。
一方、デメリットは審査に必要な書類が多く、その作成に時間がかかる点です。ただし低金利で融資を受けられることを考慮すれば、積極的に検討するべき資金調達方法といえます。
「融資」6.信用保証協会
信用保証協会は金融上の公的保証人となり、資金調達の円滑化を目的とする専門機関です。信用保証協会の「信用保証」を提示することで銀行や信用金庫から融資を受けやすくなります。
ただし融資決定にはある程度の時間が必要となるでしょう。また利息とは別に融資額の1%前後の信用保証料を支払わなければなりません。
もし何らかの事情により返済ができなくなった場合、信用保証協会が代わって金融機関に代位弁済してくれます。 代位弁済後は、信用保証協会に対して返済するのです。
「融資」7.地域の信用金庫
地域の信用金庫から融資を受ける方法です。信用金庫は地域社会への貢献を役割としています。
事業に関する情報提供や取引先の紹介などもしてもらえるため、積極的に利用したい資金調達方法の1つです。また融資のハードルも銀行に比べて低く、起業時の資金調達として相性が良いでしょう。
また起業後の事業拡大のタイミングにおいても利用されることが多いです。ただし信用金庫ごとに借り入れ条件や審査基準が変わるため、まずは実際に会って内容を確認することをおすすめします。
「融資」8.個人間の借入
信用によって個人間で借り入るのも資金調達の方法です。ただしあくまで個人の信用が担保となるため、借り入れできるかどうかは個人次第となります。
また返済が滞れば、信頼関係も崩れてしまうでしょう。起業時における資金調達の方法ではあるものの、おすすめはできません。
「その他」9.クラウドファンディング
クラウドファンディングとは目指すプロジェクトに対し、インターネットを通じて支援金を募る資金調達方法です。プロジェクトに共感を得ることができれば、個人や法人を問わず資金を集められます。
インターネットの普及に伴い、増加傾向にある新しい資金調達方法の1つでしょう。一般社団法人日本クラウドファンディング協会の報告によると2019年の融資型・不特法型クラウドファンディングにおける日本の市場規模は約1,100億円を超えています。今後もさらに増加が予想される資金調達の方法です。
参考:一般社団法人日本クラウドファンディング協会によるクラウドファンディング市場調査報告書
「その他」10.ビジネスコンテスト
ビジネスコンテストにより資金調達も可能です。ビジネスモデルやプラン、アイディアのコンペティションを行い、そこで賞金を得る方法です。
政府や民間などが中心に、様々な機関でビジネスコンテストは開催されています。賞金だけでなく、ブランディングや力試しとしての活用もよいでしょう。
まとめ
起業時の資金調達の概要や種類、その方法などについて紹介しました。起業してからの数年間は資金調達が難しい時期ともいえます。
資金繰りが厳しい時期にも、人件費や商品の仕入れ、広告費などは事業を継続する上で必要です。銀行から融資を始め、それ以外の資金調達方法も積極的に検討しましょう。
資金調達方法の内容や種類を正しく理解し、事業規模や業種にあった方法を選択することが大切です。実現性が高く、無理のない資金調達は事業の継続性を高めてくれます。
また資金調達だけでなく、コスト削減なども同時に行うことも重要です。当記事を参考に、適切な資金調達を実施し事業が発展されることを願っております。