ベビーフェイス効果とは、赤ちゃんの顔と似た特徴をもった顔を見た場合、緊張がゆるんで警戒心がなくなってしまう心理状況のことを表します。
人間に作用する心理的効果の一つであるベビーフェイス効果について詳しく解説していきます。ベビーフェイス効果が引き起こされる原理やビジネスに活用する方法などについても紹介していくので、ぜひ参考にしてください。
ビジネスをおこなっていく上で重要なことの一つに、顧客やユーザーに親近感を抱いてもらうことがあります。
しかし、顧客やユーザーの心をつかむというにはそう簡単にできることではありません。
実際にその点で苦労している企業や個人の方も多いのではないでしょうか?
しかし、ある心理学のテクニックを使えば、顧客やユーザーに親近感を抱いてもらえるようになったり、親近感を抱いてもらうきっかけを作ることができるようになります。
そして、その心理学のテクニックというというのが、今回紹介していく「ベビーフェイス効果」です。
この記事では、顧客やユーザーとの距離を縮めるのに役立つベビーフェイス効果について詳しく解説していきたいと思います。
ベビーフェイス効果はマーケティングやデザインに活用できるとても便利な心理学的テクニックの一つで、さまざまな分野で活用していくことができるので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ベビーフェイス効果とは
まず、ベビーフェイス効果の概要についてみていきましょう。
ベビーフェイスを日本語に訳すと赤ちゃんの顔となりますが。
つまり赤ちゃんの顔や赤ちゃんのような特徴を持った顔を見ることで得られる効果となります。
私たち人間は、赤ちゃんや赤ちゃん顔と似た特徴をもった顔を見た場合、緊張がゆるんで警戒心がなくなってしまうようになっています。
それと同時に、親近感を抱くようにもなります。
赤ちゃんに対する人間の反応を利用したものがベビーフェイス効果であり、ハロー効果と呼ばれる心理学現象のひとつです。
ハロー効果についても解説すると、人は何かを判断するときに、最も目立つ特徴の影響を受けるため、他の特徴がそれにより歪められてしまいます。
ベビーフェイス効果が働く理由は「ベビースキーマ」にある
では、なぜ私たちは赤ちゃんの顔を見ると緊張がとけて警戒心が緩み、親近感を覚えてしまうのでしょうか?
その秘密は、オーストリアの心理学者であるコンラート・ローレンツ(Lorenz,K)が命名した「ベビースキーマ」にあります。
ベビースキーマというのは、赤ちゃんや赤ちゃんと同じような特徴を備えた容姿の人、動物、キャラクターに備わっている外見的な特徴のことを指した言葉です。
私たちは、ベビースキーマを持った人や動物、キャラクターを見ると本能的に安心し、警戒心が緩んでしまうようになっています。
それと同時に、かわいいといった感情や守ってあげたい・優しくしてあげたいという感情も生まれるため、その人物や動物、キャラクターに親近感を覚えるようになるわけです。
実験でも証明されているベビーフェイス効果
2012年に、16歳~60歳の男女100人を対象とした、ベビーフェイス効果の実験が行われました。
被験者は「幼児の顔」「大人の顔」「猫の顔」の写真をランダムに見せられ、それらの「かわいさ」について1から7段階まで評価を付けました。
実験に使用された画像は、あらかじめデジタル加工で、「ベビースキーマの条件に近づけられたもの」と「大人の顔に近づけられたものが混じっていました。
実験の結果は、幼児の顔と赤ちゃんの顔と近い特徴を持つ猫の顔は、ほとんど同じくらいのレベルで「かわいい」と評価されました。当然ですが、大人の顔は「かわいさ」の度合いは低評価でした。
この実験からからもわかる通り、「かわいさ」は幼さの度合い、すなわちベビースキーマの度合いと比例していることが判明しました。
ベビースキーマの外見的特徴
ベビースキーマを持った人物や動物、キャラクターには、以下のような外見的特徴があります。
頭が大きい
額が広い
顔の幅が広い
大きな目
顔の彫りが浅い
鼻が小さい
鼻の幅が広い
顎が小さい
手と足が短い
手と足が太い
目が顔の中央より下に位置している
体が全体的に丸みをおびている
柔らかさをイメージできる体
私たちはこのような特徴を持った人物、動物、キャラクターに愛着を感じるようになっているわけです。
つまり、このような特徴を備えていれば、必ずしも赤ちゃんである必要はないわけです。
そのため、童顔顔の大人でもベビーフェイス効果を発揮できる可能性はありますし、動物やキャラクターでも効果を発揮できる可能性があるわけです。
ただし、動物やキャラクターでもベビースキーマ的な特徴を備えていない場合は効果を発揮することができないようになっているため注意しましょう。
ベビーフェイス効果をもたらす具体例
ここでは、赤ちゃん以外にもベビーフェイス効果を引き起こす具体例を紹介します。
・動物の赤ちゃん
子犬や子猫の画像を見るだけでも、とても可愛いと感じます。たとえライオンやクマなど獰猛な動物であっても、赤ちゃんの場合は愛らしいと感じるものです。
・子役や童顔のモデルやタレント
「額が広い」「目が大きい」といった特徴があれば、大人であってもベビーフェイス効果が作用します。
・イメージキャラクター
大きな目に短い手足、小さな鼻など、ベビースキーマの条件に当てはまるようにデザインされたキャラクターは数多く存在します。
お菓子のパッケージや企業のイメージキャラクターにも、ベビースキーマに基づいたものが見られます。
ベビーフェイス効果の活かし方
顧客やユーザーの緊張や警戒心を和らげ、逆に親近感を抱かせることのできるベビーフェイス効果ですが、ビジネスに活かしていきたい場合、どのようにして活かしていけばいいのでしょうか?
ベビーフェイス効果は、主に企業のマーケティング活動やウェブサイトのデザインなどに活かすことができます。
それぞれの活かし方について詳しくみていきましょう。
1. マーケティングに活かす
ビジネスでベビーフェイス効果を活かすことができる分野の一つがマーケティングです。
マーケティングにベビーフェイス効果を活かすことで顧客やユーザーとの距離が縮まり、商品の購入やサービスへの加入を促すことができるようになります。
では、そのベビーフェイス効果をマーケティングにどのように活用していけばいいのかについてですが、いくつか具体的な例をあげて紹介していきたいと思います。
まず、最もスタンダードな活用法と言えるのが、CMへの活用です。
赤ちゃんや動物をCMに起用することで、顧客やユーザーに親近感を感じてもらい、商品やサービス、企業に興味を持ってもらうわけです。
最近は空前の猫ブームですが、そういったこともあり、やたらと猫が出てくるCMが増えてきたと思いませんか?
一昔前までは猫が出てくるCMと言えばキャットフードなど一部のCMぐらいでしたが、最近ではインテリアショップのCMにも猫が起用されるようになってきています。
それほど猫の人気が高く、ベビーフェイス効果による心理的な効果も大きいということですね。
また、以前やたらと数が増えたゆるキャラですが、ゆるキャラもベビーフェイス効果を活用したマーケティング方法の一つです。
先ほどベビースキーマについて解説しましたが、ゆるキャラのほとんどがベビースキーマの特徴を活かしたデザインになっています。
そのため、ちょっと増えすぎ・やり過ぎな感じはあるものの、ゆるキャラを嫌う人よりも好む人の方が圧倒的に多くなってきているわけです。
2. デザインに活かす
ビジネスでベビーフェイス効果を活かすことのできる分野の二つ目が、デザインです。
商品のパッケージやホームページ、インターネットで配信する広告など、ビジネスに関わるありとあらゆる部分のデザインにベビーフェイス効果を発揮する赤ちゃんや動物、キャラクターなどを配置していきます。
そうすることで顧客やユーザーに親近感を感じてもらえるようになるわけです。
また、パッケージやホームページなどにベビーフェイス効果を発揮してくれる赤ちゃんなどを配置することで、顧客やユーザーの警戒心を解くこともできるようになります。
匿名性の高いウェブ上のコンテンツはユーザーの警戒心が高くなりがちなので、ベビーフェイス効果を上手く活用していくことで高い効果が得られそうです。
ビジネスでの活用事例
ビジネスでは、お客さんが心を開く状態まで持っていくのはなかなか大変なものではないでしょうか。その点ベビーフェイス効果を使って相手の警戒心が緩んだり、信頼関係を築くことができるのは非常に有利です。
実際に使用されている活用例をみていきましょう。
1.東京ガスでのイメージキャラクター
東京ガスのイメージキャラクター「パッチョ」は、ベビーフェイス効果を取り入れて企業イメージアップに役立てられています。
テレビCMやSNSでも多用され、2018年には公式FBで「6万いいね!」を記録しています。
参考サイト:東京ガス
2.トヨタ自動車の「こども店長」
トヨタ自動車のテレビCMで話題になった、「こども店長」もベビーフェイス効果を活用しています。
店長として子供を起用することで、印象付けやすくなっています。
3.東急リバブルでも子供が活躍
不動産仲介業者である東急リバブルでは、テレビコマーシャルやウェブサイトに子供が採用されています。
不動産販売では子供は直接的なお客さんではないけれど、純粋で無邪気な子供のイメージで企業の評価を演出しています。
参考サイト:東急リバブル
ベビーフェイス効果をビジネスに活用するときの注意点
ベビーフェイス効果はマーケティングやデザインなどビジネスの分野にも活用することができると解説してきましたが、実際に活用する場合いくつか注意しなくてはいけないポイントがあります。
ベビーフェイス効果をビジネスで活用していくときに注意すべきポイントの一つ目が、違和感です。
ベビーフェイス効果はさまざまな業種で活用されていますが、中にはマッチしない業種もあります。
例えば弁護士などの士業やトレーニングジムなど、信頼感や権威性を打ち出す必要がある業種では逆効果になります。
そういった業種のマーケティングやデザインに無理やりベビーフェイス効果を活用すると、顧客やユーザーが違和感を感じてしまい、逆に不信感や嫌悪感を抱いてしまう可能性があります。
また、ベビーフェイス効果の活用のし過ぎにも注意が必要です。
毎回CMや広告、商品のパッケージに赤ちゃんや動物を使ってしまうと、顧客やユーザーが「またか…」と感じてしまい、ベビーフェイス効果を感じなくなってしまう可能性があります。
最後の3つ目は、ターゲットや属性に合わせて使い分けることです。
ベビーフェイス効果で警戒心を解くのは、万全な方法ではありません。商品やテーマに合わせて、取り入れるべきなのか、目的を明確にしておきましょう。
ベビーフェイス効果を活用するときには、この3点に注意しながら活用していくようにしましょう。
まとめ
顧客やユーザーとの距離を縮めていきたいと考えている方のために、顧客やユーザーとの距離をグッと近づけるのに役立つ心理学的テクニック、「ベビーフェイス効果」について詳しく紹介してきました。
今回紹介してきたように、ベビーフェイス効果を上手く使いこなすことができれば、顧客やユーザーとの距離はグッと縮まります。
親近感が生まれ不信感を払拭することができると、その後のマーケティングやセールスが何倍もやりやすくなるので、ぜひ積極的に活用していくようにしましょう。
ただし、最後の項目で紹介した通り、ベビーフェイス効果の活用が向かない企業や商材もあります。
そういった場合、無理やりベビーフェイス効果を取り入れようとすると違和感が生まれ、顧客やユーザーとの距離が逆に広まってしまうため、そういった企業や商材では使わないようにしましょう。
また、いくら効果が見込めるからと言ってしつこいのもNGになるので、その点に関しても気をつけるようにしてください。
ちなみに、下記のページではベビーフェイス効果の他にも、仕事に活用できる心理学について解説していますので、参考にしてください。