SDGsは日本国内ではもとより、世界中で注目されている取り組みですが、国や企業といった大きなレベルでないとできないことと思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、意外にもSDGsは身近なことでも取り組めることが多く、個人でも実践できます。
そこで今回は、個人でもできるSDGsへの身近な取り組みについて紹介します。最後まで読むことで、どのようなことをすればSDGsに貢献できるのかを理解して実践していきましょう。
目次
SDGsの基本情報
SDGsの取り組みを紹介する前に、読者の中にはSDGsについての知識が曖昧な方へ向けて、SDGsの概要についてご説明しましょう。
SDGsの基本情報として誕生した背景や目標の内容などを紹介しますので、すでに知っている方も、復習として再度チェックしてみてください。
SDGsとは一体何なのか
SDGsとは、Sustainable Development Goalsを略したものです。日本語に訳すと「持続可能な開発目標」となります。具体的な内容は後ほど紹介しますが、17個の目標で成り立っており、国の発展度合いや経済状況を問わず、地球上にあるほぼ全ての国が採択した国際目標です。
ちなみにSDGsのことをエスディージーエスと読みたくなるかもしれませんが、正しくはエスディージーズです。間違えた読み方をしないように注意しましょう。
SDGsが誕生した背景
SDGsは、いくつもの背景によって誕生しました。
1つ目の背景は、現在の国際的な状況です。
今の地球は温暖化や異常気象といった自然的な驚異が問題となっている一方で、国際的な紛争や差別など人的な問題もあります。これらは、地球全体の危機意識を高める要因です。SDGsにはそのような問題を解決するための目標が含められています。
2つ目の背景は、MDGsの成功です。
SDGsの前進であるMDGs(Millennium Development Goals)は、2000年9月に開催された国連ミレニアム・サミットで採択されたものです。MDGsには「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止」、「開発のためのグローバルなパートナーシップの推進」などの8個の目標が掲げられており、達成したものもありました。
ただし、発展途上国向けが多いという反発や達成できなかった目標もあったことから、新たにSDGsが採択されました。MDGsの失敗を反省し、SDGsは世界中の人々を対象としています。
17目標の内容って?
SDGsの目標は、MDGsよりも多い17個です。主なものとしては、「ジェンダー平等を実現しよう」や「産業と技術革新の基盤をつくろう」、「パートナーシップで目標を達成しよう」などが挙げられます。
目標自体は「社会」「経済」「環境」「枠組み」の4つに分かれており、前述した目標であれば、「ジェンダー平等を実現しよう」は「社会」の1つで、「産業と技術革新の基盤をつくろう」は「経済」の1つ、「パートナーシップで目標を達成しよう」は「枠組み」の1つに含まれます。
目標だけではなくターゲットもチェック
SDGsを知る上では、目標と同じくターゲットもチェックしておきましょう。ターゲットは169個もあり、目標ごとで分かれています。
上記で紹介したものであれば、「ジェンダー平等を実現しよう」の場合は「あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する」や「女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する」などがターゲットです。
「SDGsを理解するのに、ターゲットを確認しておく必要はあるの?」と思うかもしれませんが、そこまでチェックしておくことが、各目標で達成を目指す上で課された問題を把握することにつながります。問題を把握しておけば目標に対しても取り組みやすくなるため、数が多いですが、ぜひ確認しておきましょう。
SDGsへの国際的な取り組み
SDGsは国際的な取り組みとしてさまざまな国で実施されています。しかし、具体的に何をしているのか気になる方もいることでしょう。
この項目では、そのような方向けに国ごとのSDGsに対する取り組みを紹介します。なお、今回は2021年に発表された各国のSDGs達成状況において、達成度が高いフィンランド・スウェーデン・デンマークと我が国日本の4カ国をピックアップしました。
フィンランドの場合
フィンランドは2019年度のSDGs達成度で世界第3位でしたが、2021年度は首位に躍り出ました。フィンランドの場合、SDGs達成に向けて行政が中心となって取り組んでおり、その影響で社会的にも浸透していきました。
特にヘルシンキでは、都市のことを紹介するサイトでも「サステナビリティに関する項目」を設けています。内容としては、ヘルシンキでサステナブルな1日を過ごすモデルプランやサステナビリティの基準を満たした施設の紹介などです。これらは市民だけではなく、観光客でもチェックできますので、訪れる前にチェックしてみると良いでしょう。
スウェーデンの場合
2021年度のSDGs達成度第2位のスウェーデンは、国が主体となって取り組んでいます。長年、スウェーデンでは持続可能な社会の推進を進めてきました。その影響もあって企業のSDGsへの意識はとても高く、企業を中心としたさまざまな取り組みが行われています。
例として、日本にも店舗があるIKEAを取り上げてみましょう。IKEAでは、製品の60%以上が再生可能な素材を用いています。また、IKEAの家電の多くは、エネルギー利用の効率が高いです。その他、食材や従業員の性別や人種への取り組みも行っており、積極的にSDGsへの取り組みを行っていることがうかがえます。
デンマークの場合
2021年度のSDGs達成度で第3位となったデンマークも、スウェーデン同様に国が主体となってSDGsに取り組んでいます。また、フィンランドやスウェーデンのように環境意識が高い国でもあり、その中でも代表的な取り組みとして挙げられるのが「UN17 Village」でしょう。
「UN17 Village」というのは、SDGsにおける17個の目標を全て達成することを目指した村を作るというものです。2023年に完成予定であり、村の中では、ソーラーパネルや雨水を貯水するシステム、屋上庭園などが計画されています。
日本の場合
日本は2021年度のSDGs達成度で第18位にランクインしており、アジア諸国の中ではナンバーワンです。特に目標4「質の高い教育をみんなに」と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」目標16「平和と公正をすべての人に」という目標では高評価を得ており、一定の成果を出しています。
その一方で、まだ成果が出ておらず、特に日本で課題点の多さと改善が必要とされているのが以下の5項目になります。
目標5 ジェンダー平等を実現しよう
目標13 気候変動に具体的な対策を
目標14 海の豊かさを守ろう
目標15 陸の豊かさも守ろう
目標17 パートナーシップで目標を達成しよう
上記の中でも特にジェンダー問題は日本の大きな問題とされており、スピーディーな解決を求められている目標でしょう。
なお、国としての取り組みには、ジャパンSDGsアワードの表彰や「平和と健康のための基本方針」の制定、「女性の活躍 推進のための開発戦略」の発表といったものが挙げられます。
SDGsに対して個人でできること
冒頭で紹介したように、SDGsは個人でも取り組むこともできます。しかし、一体どのようなことをすればいいのでしょうか。この項目では、誰もが簡単にSDGsを実践できるように国連により公開されたアクション・ガイドを参考に、個人ができること、家の中・家の外で分けてできること、職場でできることを紹介します。気軽に取り組めるものもあるため、ぜひチャレンジしてみましょう。
SDGsの身近な例
SDGsの身近な例はいくつもあります。具体的には、途上国で活動している団体への寄付や人権活動への署名などです。どれも一度は見かけたことあるのではないでしょうか。これらは全てSDGsに当てはまることであり、知らずに取り組んでいた方もいるかもしれません。日本に居ながらも自分ができることとして、寄付やさまざまな活動への署名を検討してみましょう。
家の中でできること
家の中でも取り組めることとして、以下のようなものがあります。
・節水や節電
使用していないときは電源をこまめに切ったり、エアコンの設定温度に注意したり、お風呂よりもシャワーで済ませるなどの節水を心がけるようにしましょう。
・冷凍を活用する
生鮮食品など生ものは期限が短いため、食べきれないときはなるべく早めに冷凍しておきましょう。そうすることで、食べ物を腐らせて廃棄することを防ぐことができます。
・エシカル消費を心がける
エシカル消費とは、地球環境や社会、人に配慮した商品を選択し、消費することを表します。具体的には、消費期限の近い商品から購入する、土に還る服やエコカーなど社会や環境に配慮した商品を選択することです。
これにより、目標12「つくる責任つかう責任」につながります。
・家庭菜園
野菜を自分で作ることで、野菜の包装や容器が不要になります。さらにお店に輸送するコストもかからないため、二酸化炭素の削減につながります。プランター栽培でハーブやトマトが作れるので、チャレンジしてみるとよいでしょう。
・捨てずに譲る・寄付する
不要になったものを捨てるという選択以外にも、リサイクルショップに売る、必要とする人に譲る、寄付するという手段があります。
あなたが手放すものを必要とする人が存在するため、正しく手放す工夫をしてみてください。
・家事を分担する
食事の支度や掃除・洗濯などは、主に女性が行っている傾向にあります。無意識的に行っている作業を一度見直し、家事の負担が平等になるように分担してみましょう。
家事分担の行為は、目標「ジェンダー平等を実現しよう」につながります。
どの行動も今日からでもできることなので、家族と話し合ってしっかりと取り組んでみてはいかがでしょうか。
家の外でできること
・マイバック・マイボトルの持参
スーパーやコンビニなどでレジ袋が有料化された影響もあり、マイバックを持参する人が増加しました。
使い捨てのレジ袋やペットボトルを使用しないことで、ペットボトルやビニール袋の消費量を削減することができます。
・紙パッケージの商品を選択する
以前はプラスチック素材が主流だった商品のパッケージですが、最近ではクラフト包材に変更している商品があります。
例えばチョコレートやスナック菓子のパッケージは、紙に仕様変更されている商品があります。環境負荷の少ない商品を選択することは、「つくる責任 つかう責任」につながっています。
・フェアトレード商品の購入
フェアトレードとは、公正・公平な取引を表します。
近年先進国では、安価で質の良い商品が容易に入手できますが、それが実現できるのは発展途上国で原料費や人件費を安く抑えて生産しているからです。
安くて良いものが手に入る一方で、途上国などの立場の弱い人々に適切な対価が支払われていない場合もあります。フェアトレード商品を購入することで、適正な価格で商品を購入し、途上国の労働環境の改善や自立の促進に結びつきます。
またフェアトレード商品の購入は、「働きがいも経済成長も」という目標の達成につながります。
・地産地消を行う
地元で生産された食材を購入するだけでも、SDGsへの立派な取り組みです。
地元で捕れたものを消費することは、輸送コストやエネルギーの削減、労働環境の改善にも貢献することになります。
・山や海、川にゴミを捨てない
近年アウトドアが盛んになり、自然と触れ合う人々が増加しています。
その一方で問題視されているのが、海や山に捨てられたゴミです。
特にビニール袋などのプラスチックゴミは、腐ることなく残り続けるため、動物が餌と間違えて食べてしまったり、体にからんでケガや死につながっています。
山や川に捨てられたゴミは、山火事を引き起こすこともあります。
SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさを守ろう」達成に向けて、ゴミは持ち帰るようにしましょう。
職場でできること
SDGsの取り組みは、家庭や個人だけではなく職場でも実践できます。
・通勤手段を見直す
通勤手段を徒歩や自転車に変更することで、二酸化炭素排出の削減につながります。
また、なるべくバスや電車といった公共交通機関を利用するようにすることも、地球温暖化対策に役立ちます。
・省エネ製品を導入する
職場の温度調節のために、冷暖房装置は必須ですが、それらを省エネルギー仕様のものに切り替えるだけでも環境への配慮に結びつきます。
・電子化・オンライン決済の導入
オフィスでは膨大な量の紙が使用されていますが、それらのうち電子化できるものはなるべく切り替えるようにしましょう。
資料を電子データ化する、web明細を利用するなど、紙の使用量を減らすことで森林環境の保護につながります。
・多様性を認め合い協力する
正社員はフルタイムで働く、長時間労働が当たり前といった従来の働き方では、育児や介護などを理由に離職に追いやられるケースが多く存在しています。
従来からのワークスタイルから脱却し、多様な働き方を実現できるような制度やルールの導入が求められています。
国連推奨の「ナマケモノでもできるアクション・ガイド」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
↓
https://fan-make.com/sdgs-we-can/
SDGsへの取り組みは企業も行っている
SDGsは個人だけではなく、企業で取り組むところもあります。ただ、ここまで紹介した中ではIKEAしか出ていないため、もう少し詳しく知りたい方もいるのではないでしょうか。
そこで最後の項目では、日本の企業としてどのような取り組みを行っており、それはどの企業なのか見ていきましょう。
SDGs経営への転換
企業の取り組みとしては、SDGs経営への転換が代表的です。SDGsは国際的な取り組みということもあり、グローバル化した経済にも大きな影響を与えています。その結果、SDGsへの取り組みが社会的な課題解決への責任を果たすことに繋がり、ビジネスチャンスの獲得にまで発展するようになりました。
また、現在ではSDGsに取り組んでいないことが信頼感の低下につながる恐れもあり、リスクとしての一面も持っています。
SDGsに取り組んでいる主な企業
上記で紹介したように、SDGsはビジネス的にも大きな影響があるため、多くの企業がSDGsに取り組んでいます。具体的には、味の素株式会社やSMBC日興証券、佐川急便株式会社などです。なお、SDGsに取り組んでいる企業は外務省ホームページで確認できます。
参照:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/case/org1.html
まとめ
今回の記事では、SDGsにおける基本情報から個人でできることまで紹介しました。SDGsは国や企業が主体となって取り組むものというイメージがあるかもしれませんが、個人の範囲であってもできることはたくさんあります。
この記事を読んでSDGsに興味を持った方は、早速身近なことから取り組んでみてはどうでしょうか。